悪いことに、今回の自民党総裁選は、候補者が乱立してバトルロイヤル状態である。恐らく一回目の投票で過半数を取る候補者は現れず、上位2名による決戦投票が行われる見込みであるので、二つの陣営の対立に最終的には集約されることになるが、それにしても、過去最長とも言われる選挙期間(告示日→投開票日)や、現職総理不出馬という状況に伴う告示日前からのさや当てもあって、各陣営同士の争いをエスカレートさせる期間が長い。

こう言うと語弊があるかもしれないが、一般論として、見ている分には選挙は楽しい。色々な候補者が色々な主義主張を述べ、更に言えば相手を論難し、それを見て大衆は留飲を下げたり怒りに火がついたりして、笑ったり泣いたりキレたり、安酒に酔ったような気分になる。

「知名度やPRが命」という状態に拍車がかかり、本来は選挙後の運営の方が大事なのに、選挙に勝つまでがすべてとなり、悪く言えば、中身がある候補者より、とにかく知られているスポーツ選手や芸人などTVやネットでおなじみの人が有利になる。どういう人を選ぶかは選挙民のレベル次第だ。

自民党の総裁選や日本の総理大臣の選出は、国会議員(や党員)などによって行われる間接選出方式なので、各地の首長選やアメリカ大統領選(選挙人制度なので一応間接だが、実質的には直接)のような直接選出方式とは異なり、“良く分かった人たち”による叡智を結集した選出となっている。今のところ自民党の総裁(=総理)が、芸能人やスポーツ選手の知名度頼みで決まる、ということにはなっていない。ただ、現下の流れを見るに今後はどうであろうか。

本来は、PR力や知名度よりも、選出された後の組織の運営力や政策の実現力で総理や総裁が選ばれるべきであるが、残念ながら、選挙が盛り上がれば盛り上がるほど、そうはならない。そして、選挙が盛り上がれば盛り上がるほど、陣営同士の分断が深まり、事後の運営は難しくなる。

  1. 最後の希望