学校の先生たちは、実はそのことを理解しているので、生徒には選挙をさせ、多数決による投票という伝家の宝刀を抜くように仕向けつつ、自分たちは、学校運営上の火種を顕在化させないよう、決して「校長を選挙で選ばせろ」とは騒がない。会社の構成員たちも、少なくとも無意識的にそのことをよく承知しており、「選挙で社長を選べ!」とは騒がない。これが社会の現実である。

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2. 自民党総裁選

自民党総裁選のニュースが、台風のニュースと並んで連日、各メディアで取り上げられている。主な派閥の解散により、その軛(くびき)がなくなったということで、今までだと親分たちが調整していた候補者同士の争いが(派閥単位で立候補者数が基本的に限られていたのが)、そうではなくなった。今回は、ともすると過去最大数の候補者が乱立する可能性も取りざたされていて世間を大いににぎわせている。

若い小泉進次郎氏か、急に名前が出て来た小林鷹之氏か、国民的人気のあるベテランの石破茂氏か、岸田政権でも中枢だった茂木敏充氏か、女性の上川陽子氏か、党員でなければ投票はできないが、確かに見ているだけでも楽しいと言えば楽しい。

少なくとも、推薦人制度(20人の自民党所属の国会議員の推薦がないと立候補できない仕組み)が導入されてからは、立候補者数が過去最大となることはほぼ間違いない中、「やはり、自民党には色々な人がいて良いね」とか「選択肢が多いことは素晴らしい」と自民党の人気も上昇しているようだ。

テレ朝系の調査などを見ていると、7月までは政権交代をした方が良い(自民党は一度下野した方が良い)という傾向が世論調査で出ていたが、8月から逆転したようだ。私などに言わせれば、政治とカネの問題などに根本的に更にメスを入れるような自民党の大改革はこれからなのに、既に岸田氏の不出馬や派閥解散の反射的効果としての総裁選での候補者乱立などで、禊はある程度済んだという雰囲気すらある。