ピレスロイドは殺虫剤として普及したため、様々な地域でピレスロイドが使用され、これにより、抵抗力が強い個体のみが生き残れる環境が作り出されます。

これはゴキブリたちにとっては過酷な状況でしたが、持ち前の繁殖力の高さ(1匹から数百匹産まれる)により、抵抗力が強い個体が繁殖し数を増やすことができました。

さらにゴキブリの世代交代(各個体の寿命は数カ月)により、「ピレスロイドに強い個体が生き残り、弱い個体は淘汰される」というサイクルが短い期間で何度も繰り返され、ゴキブリの種としてのピレスロイド耐性強化が急速に進んだのです。

結果として、チャバネゴキブリの通り道にピレスロイドを塗布するという弱い方法では、あまり効果が得られなくなりました。

実験では、ゴキブリの体に直接塗布する方法が有効だと判明しているので、直接噴霧して駆除する場合は、まだこの薬剤の有効性が失われているわけではないようです。

しかしゴキブリたちの耐性獲得が早いため、これまで想定されていた使用方法の一部(壁や床への塗布)については、ほぼ効果が得られないという状況になってしまっているです。

殺虫剤については、もともと噴霧した薬剤が床や壁に残留することを汚れとして嫌う人も多いため、こうしたタイプはもはや時代遅れなのでしょう。

最近は、ゴキブリを冷却して殺すタイプなど新しい殺虫剤も登場しているため、今後はこうした商品を利用するのが合理的かもしれません。

今回の研究は床に塗布する薬剤の効果でしたが、こうした罠タイプの殺虫剤に対してはゴキブリが耐性獲得しやすいのだとすると、地道に見つけたら一匹ずつ殺すという戦いはなくならないのかもしれません。

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参考文献

Consumer-grade insecticide sprays fail to control cockroaches, study shows
https://www.eurekalert.org/news-releases/1053663