どこからともなく「ゴキブリ」が現れると、居心地の良いくつろぎスペースが戦場へと早変わりします。
私たちがその戦いで主に用いるのはゴキブリ用の殺虫剤です。
この殺虫剤の中には、ゴキブリに直接スプレーするタイプ以外にも、ゴキブリの通り道に塗布するタイプが存在します。
では、ゴキブリの通り道に塗布するだけで本当に効果があるのでしょうか。
アメリカのケンタッキー大学(University of Kentucky)昆虫学部に所属するジョナリン・M・ゴードン氏ら研究チームの最新の研究によると、一般消費者向けの散布残留性(スプレー)のゴキブリ用殺虫剤には、私たちが期待するほどの効果がないと分かりました。
この研究によると、世界共通の室内害虫である「チャバネゴキブリ」は、これら殺虫剤の主成分である「ピレスロイド」の耐性を獲得しており、実験で用いられた8割が死ぬことはなかったという。
研究の詳細は、2024年8月14日付の学術誌『Journal of Economic Entomology』に掲載されました。
目次
- ピレスロイド系の殺虫剤はゴキブリに効くのか
- チャバネゴキブリの8割は、床に散布するタイプの殺虫剤が効かない
- 繁殖力の高さと世代交代の早さがゴキブリの耐性を高めている
ピレスロイド系の殺虫剤はゴキブリに効くのか
私たちは、生命力が強くしぶといゴキブリと戦うために、殺虫剤を活用してきました。
一般消費者向けのゴキブリ用殺虫剤の主成分には、合成ピレスロイドが使用されています。
このピレスロイドは、昆虫類や両生類、爬虫類の神経細胞に作用する神経毒です。
ピレスロイドが昆虫たちの神経細胞膜に存在するナトリウムチャンネルと結合。
これにより、ナトリウムイオンが過剰に神経細胞内に流入し、神経の過剰興奮を引き起こすのです。
結果として昆虫たちの神経系の機能が乱れ、麻痺や死に至らせます。