コロナ明け直後

 コロナの波は幾度となく迎えることとなったが、外食業界にとってターニングポイントとなったのはコロナが5類に移行された23年5月8日となる。今まで表立って宴会をすることが敬遠されていた状況がなくなり、国内旅行やインバウンド含めて飲食店は活気を取り戻し始めた。だが、コロナ禍で拡大した食のスタイルは完全に元へと戻るわけではなく、そのまま残る形となり、来店予約とテイクアウト/デリバリーは併用していくが求められた。

 一方、食材原価や人件費は高騰を続けて、コロナ給付金も打ち切られたことで、外食業界では繁盛店と経営が苦しい店とが2極化する事態となった。外食業界から離れた人手は戻ることなく、人手不足の中で店舗運営をどのようにしていくのかが問われることとなった。その過程で集客に強い看板を活用し、安定した仕入れが可能となるFCへと舵を取る店も増えたように思う。

 チェーン店は自分らで店舗を構えると多大な初期費用がかかり、スピード感をもって店舗を増やすことは難しい。コロナ明けに店舗を一気に拡大しているチェーン店はFCを活用しながら勢いを増しているのである。

コロナの残したものとこれからについて

 コロナ明けから1年以上が経ったわけであるが、外食業界では「人手不足」が解消される見通しが立ってはいない。少ない人でどのように店舗を運用しているのかを突き詰め、さまざまなソリューションを導入したほか、どうしても足りない人手についてはスキマバイトを活用することが主流となりつつある。もちろん専門的な知識や経験が問われるコンサルや集客などについては、アウトソーシング化が進んでおり、拡大し続けるインバウンド需要については組織的な対応が本格化している。

 食のスタイルが多様化したことに伴って飲食店自体も多様性が問われ始めているように感じる。いわゆる総合居酒屋と呼ばれる何でも食べられる店よりは、専門性を持って食や空間を提供することが好まれる傾向が強まっている。つまり、食べることとはいったい何なのか、その店で食べる魅力は何なのか、をこれほどまでに問われる時代はないように思う。もちろんお店の在り方というのは正解が一つではない。外食企業自体が一律ではなく、どれだけ個性を出していけるのかが問われているのではないだろうか。