米アマゾン・ドット・コムで退職者が増加している。11日付「BUSINESS INSIDER」記事によれば、社員にオフィス勤務を義務付ける「RTO(Return to Office)」が原因だというが、同社は昨年、1万人の人員削減を発表し、今年に入り約2万7000人を削減したとも報じられている(6月2日付「WIRED」記事より)。今年5月にはシアトル本社前で社員による大規模なストライキが行われたが、以前から同社の離職率の高さは知られており、経営側が社員の労働組合結成の動きを阻止する動きをみせるなど、経営側と社員の間の軋轢がクローズアップされつつある。    アマゾンに限らず米IT企業の人員削減の動きは顕著だ。昨年以降、フェイスブックを保有するメタは1万1000人以上、マイクロソフトは約1万人、ネットフリックスは約450人を削減すると発表。X(旧Twitter)は昨年10月にイーロン・マスク氏による買収後、解雇された人も含め全社員の約8割にあたる6000人以上が退職したとされる。

 コロナ禍による巣ごもり需要の高まりを受けアマゾンは積極採用を行い、2022年9月末までの1年間で社員数は7万6000人も増加したが(22年11月4日付日本経済新聞記事より)、一転して昨年11月には新規作用の凍結を発表。今年2月には多くの従業員が週3日以上、オフィスに出社して勤務すると発表し、7月には社員にハブオフィス近辺への引っ越しか退職かを選択するよう求めていることが公となった。

「米国の大手IT企業がこぞって出社を義務付けたり都市のオフィスへの出社を命じているのは、それを理由に離職する社員を生じさせるという人員削減策の一環でもある」(外資系企業社員)

労使間の対立

 アマゾンといえば高い離職率でも知られている。米紙ウォールストリートジャーナルの調査によれば、米国における同社の倉庫労働者の年間の離職率は約100%となっている。背景には会社による労務管理への不満の強さがある。物流施設では従業員が労働組合を結成する動きをたびたび見せてきたが、会社側は結成が否決されるよう反対運動やキャンペーンを展開。22年4月にはニューヨーク州の物流施設で同社初の労働組合が結成されたが、会社側は労組との交渉を拒否している。

 日本でも労使間の対立がみられる。21年、アマゾンジャパンに勤務していた男性が不当解雇されたとして社員としての地位確認などを求めて同社を提訴。男性によれば、同社は男性に業務に必要なシステムの使用や会議への出席を禁止し、退職勧奨を行った上で、勤務成績が改善しなかったという理由で解雇したという。昨年9月には、アマゾンの配達ドライバーが過重労働や全国最低レベルの日当の是正を求めて労働組合を結成。22年10月14日付「FRIDAY DIGITAL」記事によれば、アマゾンジャパンに勤務していた男性は課題達成の基準が不明確なコーチングプランに参加させられ、業務改善の名目で圧迫面接や退職勧奨を受け、上司によるパワハラの疑いを人事に相談したところ、その相談内容が上司に筒抜けになっていたという。また、社内ではPIP(Performance Improvement Plan)と呼ばれる個人の業績改善計画が存在し、ノルマを達成しなければ退職を迫られ、退職を拒否すれば降格され、実際に多くのアマゾン社員がPIPによって退職しているという。この男性は「FRIDAY」の取材に対し、ストレスから頭痛や吐き気に見舞われ、病院で適応障害と診断され精神安定剤を服用しながらPIPを続け、何度も退職勧奨を受けていたと語っている。

「米国の企業では、管理職に各分野においてもっとも有能な人材を採用することをタスクとして課しているケースは珍しくない。ネットフリックスのようにそれを明文化している企業もあるが、このルールの結果として『もっとも有能』だと評価されなくなった人材は解雇する義務が管理職には生じる。よって、企業にとって解雇は組織全体のパフォーマンス向上や業績向上につながるので『良いこと』と認識され正当化される。この企業カルチャーは変えようがなく、あくまで個人的な考えだが、そのような外資系企業でPIPや退職勧奨にあったら、抵抗したり無理に勤務を続けようと耐えて心身を壊しても自分が損をするだけなので、退職金をもらってさっさと辞めて転職したほうがよい。会社に裁判を起こして多額のお金と労力を浪費するより、より自分に合う会社を見つけて新たなキャリアを形成していったほうがいい」(元外資系金融機関社員)

 当サイトは10月7日付記事『アマゾン倉庫バイトが過酷、「考えるの苦手な方にぴったり」と募集…秒単位で管理』でアマゾンジャパン倉庫の労働実態について報じていたが、以下に改めて再掲載する。

――以下、再掲載――

 ECサイト「amazon.co.jp(アマゾン)」の物流倉庫でのアルバイト募集が一部で話題を呼んでいる。募集要項には「同じ作業を繰り返すルーチンワークなので何も考えなくてOK」「『考えるのは苦手…』という方にぴったり!」などと書かれており、業務内容は「商品チェック(検品)」「(2)バーコードを読み込んで在庫登録」「(3)棚へ商品を入れて保管、他シール貼り・梱包・ピッキング・品出し等」。時給は1200円で1日8~10時間勤務という条件だ。単純作業で1日1万円前後稼げるとあって、一見「おいしいバイト」のように思えるが、「アマゾン倉庫のアルバイトはきつい」という話は以前から聞かれる。そこで今回は識者への取材をもとに、その実態に迫ってみる。