家計消費との関係が深い所定内給与
一方、賃金と消費の関係を見るべく、1994年~2023年の名目家計消費と各種一般労働者の所定内給与との関係について、自由度調整済み決定係数の大きさで見ると、賃金構造基本統計調査が0.2681、毎月勤労統計 5 人以上で0.2932と明確な正の相関関係がある。この背景には、個人消費の動向は恒常所得の色彩が高い一般労働者の所定内給与の動向に大きく左右されることがあることが一因と考えられる。
こうしたことから、賃金上昇の足を引っ張っているのは30代後半~50代前半の大卒一般労働者であると考えられ、この世帯は第二次ベビーブーマー世代を含む子育て世代で消費支出額も大きいため、個人消費低迷の一因になっていると考えられる。そして、この世代はバブル崩壊後の就職氷河期世代で就業機会に恵まれにくかったことに加えて、就職に苦労したことから賃金上昇よりも雇用の安定を重視する傾向が強くなることで労働市場の流動性が低くなっていることが推察され、賃金が上がりにくくなっている可能性がある。
一方で、高卒・パートタイム労働者の賃金がそれぞれキャッチアップ過程にあることからすれば、生産性に見合った賃金への調整過程にあるともいえよう。他方、シニアの賃金は雇用延長などから平均賃金の押し上げ要因となっているが、これはむしろシニアになる前の賃金の抑制要因となっている可能性があり、総賃金でみれば増加要因と前向きにとらえることができるかは微妙である。
こうして見ると、結局、日本で平均賃金の上昇を阻んできたのは、労働市場の流動性が乏しいことで経営者の人材流出に対する危機感がこれまで低かったことも一因と推察される。特に最も賃金上昇の足を引っ張っている30代後半~50代前半の大卒一般労働者の労働市場の流動性が低い背景には、同じ会社で長く働くほど賃金や退職金等の面で恩恵を受けやすくなる日本的雇用慣行も影響していると考えられる。
以上を踏まえれば、日本の個人消費を本格的に回復させるべく必要な恒常所得を引き上げるためには、対内直接投資の更なる促進等により外資参入に伴う賃上げ圧力を強めることや、減税や補助金等も含めた転職支援の充実等の思い切った策が必要となってこよう。
提供元・Business Journal
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