本稿は、アフリカビジネスパートナーズによる寄稿記事である。同社は、ケニアや南アフリカに現地法人を持ち、アフリカ40か国で新規事業立ち上げやスタートアップ投資に関する支援を提供している。現地のビジネス最前線を知る同社独自の視点から、投資家が注目するべきアフリカのスタートアップトレンドを毎月ピックアップして紹介していく。

今号は前号に引き続き、アフリカのアグリテックを取り上げる。前号では、農業バリューチェーンの川上、すなわち農産物の栽培の課題に関わるスタートアップを取り上げた。今号では、栽培した農産物を市場に届けるまでの「川中」の課題解決に取り組んでいるスタートアップを取り上げる。


アフリカでも日本と同様、農家から農産物を集荷する業者と、それを小売店やレストランなどに売りたい業者が、青果卸売市場で売買をおこない農産物が流通している。ただしこの農家から市場、市場から最終の買い手までの流通を担っているのは企業や農協でなく個人の参加者がほとんどである。市場を通さず、産地から仲買人を何人も経たうえで販売される作物もある。

このような「伝統的流通」では、取引は非効率となり、トレーサビリティーが確保できず、設備投資がなされないことで品質不良や収穫後の損失(ポストハーベストロス)が起こりやすい。

分割払いの冷蔵倉庫で農産物のロスを削減

ImageCredit:Cold Hubs

ポストハーベストロスを引き起こす要因のひとつが、農産物の保管状態の悪さだ。伝統的流通の参加者である小規模農家や個人の仲買人はいずれも冷蔵施設を持ち合わせていないため、時間の経過とともに農産物の品質は劣化し、大量の廃棄が生じる。

こうした課題に対処しているのがナイジェリアのCold Hubsで、太陽光発電によって冷蔵倉庫の電源をとり、保管日数や量に応じた分割払いで棚貸しすることで、電力が十分でない農村に住む資金力に乏しい農家でも、収穫した農作物を適温で保管できるようにしている。同製品を活用することで新鮮なまま平均21日間保管でき、廃棄農産物を約80%削減できることから、農家の販売収入は年間約25%増えたという。