独立運動が起きてから、ケベック州から銀行を始め主要な企業が同州から去り、多くの若者もそこでは仕事がないと言ってトロントなどに移った。正に、これと同じ現象が現在カタルーニャ州と首府バルセロナで起きている。
あと30年もしない内にカタルーニャ、特にバルセロナの経済はマドリードから大きく引き離されたものになっているはずである。これがカタルーニャで独立を推進している政治家や企業家の間で理解されていないというのは非常に残念である。
カタルーニャから企業が去っているバルセロナの経済の後退を意味する現象として以下のようなことが起きている。
2017年10月に違法住民投票をして州政府は独立を宣言した。その時点から昨年末までにカタルーニャから州外に本社を移した企業は9000社近くある。
更に、今年に入ってもこの上半期にカタルーニャを去った企業は495社。その一番の恩恵を受けたのは、移転して来た企業が最も多いマドリードである。
本社を州外に移せば、税金なども本社が所在する州に収めるだけで、カタルーニャに収める必要がなくなる。
実際、仮に独立したらGDPの170%の負債を抱えたカタルーニャの経済では年金も払えなくなるというのが理解できないようである。
カタルーニャの財政は非常に悪く、15種類の税金が存在している。他州で最も多く税金の種類を抱えているのはアンダルシア州とムルシア州の6種類だけである。
2018年までカタルーニャで受け入れていた外国からの投資はスペイン全体の17%であった。それが2017年10月の独立宣言以後、5.5%まで後退している。2010年から2019年までの投資をマドリードとバルセロナと比較すると、前者は後者の4倍ほど投資が増えている。
例えば、米国はカタルーニャ州に投資するのは御法度となっている。昨年、フォルクスワーゲン社が電気自動車用のバッテリーの生産工場をバレンシア州に建設することに決めた。同社の系列自動車メーカーセアット(SEAT)はバルセロナにある。だから当然バルセロナにバッテリー工場を建設するのが当然の成り行きであったはず。ところが、それを蹴ってバレンシアに進出することに決めた。これもカタルーニャの独立への動きを警戒しての決定であるのは自明である。