数あるアメリカ先住民族(インディアン)の伝承には、今は姿を消してしまった“白い巨人族”の言い伝えが残されている。多くの伝説で描かれた“白い巨人族”とはいったいどんな種族だったのか?アメリカに伝わる“白い巨人族”をいくつか紹介しよう。
■チョクトー族(Choctaw)の白い巨人伝説
移住前は本来ミシシッピ川下流域に居住していた部族がチョクトー族だ。このチョクトー族などを研究した著書『History of the Choctaw Indians, Chickasaw and Natchez』(1899年刊)の中で著者のホレーショ・ バードウェル・クッシュマン氏は次のように書き記している。
「チョクトー族の言い伝えによれば、現在のテネシー州には巨人族が長く定住しており、チョクトー族の先祖が移住しようとした際に、この巨人族と争ったという。巨人族はナハロ(nahullo)と呼ばれていて、並外れた巨大な体格をしていたという記録が残されている」(『History of the Choctaw Indians, Chickasaw and Natchez』より)
チョクトー族の言葉でナハロは“白人”全般のことを指すのだが、言葉の由来はこの巨人族からきているということだ。ならばこの巨人族・ナハロは皮膚が白かったということになる。チョクトー族はナハロとの戦闘に破れ、移住はかなわなかったようで、それ以降、チョクトー族にとってミシシッピ川を越えることは、ナハロと遭遇する危険な行為と見なされてきたのだ。
■コマンチェ族の白い巨人伝説 コマンチェ族は現在のニューメキシコ州東部、コロラド州南部、カンザス州南部、オクラホマ州全域、テキサス州の北部と南部という広域で活動をしていた部族だ。
現在のグレートプレーンズという広大な草原地帯に居住していたコマンチェの支族長が、1857年に巨人族について言及した記録が残っているという。それによれば、グレートプレーンズ一帯に身長3メートルもの“白い巨人族”が栄華を誇っていたということだ。勇敢で誇り高く、ワルキューレの血筋を継ぐというその巨人族は山脈の頂に要塞化した居住区を作って住んでおり、広大な地域を支配し、その勢力は拡大を続けていたという。支族長によれば、この“白い巨人”に比べれば、現代の白人はすべてピグミーであるということだ。
それほどまでの勢力を誇っていた“白い巨人族”はどうしていなくなってしまったのか? その原因は彼らの“驕り”にあったという。一時の繁栄で思い上がった彼らは正義と慈悲を忘れ、自ずから崩壊、絶滅の道へ進んでいったということだ。