いわゆる、卵が先か鶏が先かという問題です。

調査から分かるのは、肉食をやめた人たちの明らかなメンタルヘルスの低下傾向だけなのです。

しかし、ドベルスク氏はおそらく、菜食主義の人は精神疾患に陥ったために、肉食をやめた可能性が高いだろうと考えています。

このことは2012年に報告されている別の研究からも示されており、年齢を追って調査を行うと、菜食主義への切り替えに先行してうつ病が発症している傾向が見られています。

精神疾患に苦しんでいる人は、しばしば自己治療の一環として、食生活を変えることがあります

そして、多くの人が自然と人間社会の内包する残酷さへの倫理的反応としてビーガニズムを選択しているようです」

ドベルスク氏はそのように説明しています。

肉を食べるのをやめて、野菜をたくさん摂れば精神状態が良くなると考える人も多いが、そこに科学的な根拠はない
肉を食べるのをやめて、野菜をたくさん摂れば精神状態が良くなると考える人も多いが、そこに科学的な根拠はない / Credit:Depositphotos

また、高い不安レベルを抱えていたり、うつ病を持つ人は、気候変動についても強く不安をいだいており、個人が炭素排出量を減らす方法として、肉食をやめるという、食事療法を選択する可能性が高くなるのだといいます。

これは世界的に、畜産業が炭素年間排出量の約15%を占めているという情報からたどり着いている決断でしょう。

世界的な傾向として、WHOの報告する精神障害の増加と並行して、菜食主義(ベジタリアン)や完全菜食主義(ビーガン)を掲げる人たちは一般的になりつつあります。

これは、うつ病などの精神疾患の発病に伴って、食生活を変える(菜食主義へ切り替える)人たちが多いために起きている可能性が高いかもしれません。

もちろん、肉の取り過ぎも健康にいいとは言えませんが、肉を全く摂らない生活が、健康にいいはずはなく、合理的な判断とは言い難い部分があります。

今回の研究結果が発表された当初は、肉を食べればメンタルヘルスが向上すると考える人たちもいたようですが、どうやらそれは誤りのようです。