フェムトはアトの1つ上の単位であり、1000アト秒=1フェムト秒となります。

そのため既存の技術で飛んでいる電子を画像化しようとすることは、坂本龍馬を撮影したカメラで銃弾を撮影しようとするのと同じと言えるでしょう。

そこで今回、アリゾナ大学の研究者たちは、飛んでいる電子を捉えるための、究極のカメラを開発することにしました。

開発にあたってはまず、既存の透過型電子顕微鏡の改良が行われました。

中学校などに置いてある顕微鏡は、可視光を使って観察を行いますが、透過型電子顕微鏡では光の代りに電子ビームを使用します。

また透過型電子顕微鏡ではシャッタースピードによって画質が決まるのではなく、電子パルスの持続時間によって決まります。

電子パルスの持続時間が短ければ短いほど、時間の解像度が増し、早い物体を捉えることが可能になります。

画面中央の楕円で囲んだ部分で2種類の光パルスが生成されます
画面中央の楕円で囲んだ部分で2種類の光パルスが生成されます / Credit:Dandan Hui† . Attosecond electron microscopy and diffraction . Science Advances (2024)

そこで研究者たちは、上の図のような装置を開発しました。

この装置では上から電子ビームが照射されると共に、横から光が発射されます。

このとき照射される光は2つに分割され、最初の光のパルス「ポンプパルス」はサンプルにエネルギーを供給して電子の活発な移動を促す役割を担います。

2番目の光パルスは「光ゲーティングパルス」と呼ばれ、このパルスが存在する短い時間のなかだけ、電子ビームがサンプルとされたグラフェンに照射されるようになります。

光を使って電子ビームがサンプルに注がれる時間を、短い時間に限定するわけです。

原子核の周りの電子は普段は確率の雲を形成して場所が定まっていませんが、電子ビームで観測することで位置を確定させることが可能になります。