アメリカのアリゾナ大学(UA)で行われた研究により、グラフェン内部を飛び回る電子を捕らえられる顕微鏡が開発されました。

この新しい顕微鏡は極めて短いアト秒単位のパルスを駆使することで、飛行中の電子の撮影を可能にします。

研究者たち開発された「アト顕微鏡」を使えば、これまで知られていなかった粒子の世界を直接的に垣間見ることができると述べています。

研究内容の詳細は2024年8月21日に『Science Advances』にて公開されました。

目次

  • 電子を視る方法を開発する

電子を視る方法を開発する

カメラの性能には「判別できる一瞬がどれだけ細かいか?」という要素があります。

大昔のカメラはこの「一瞬」が非常に長く、撮られる人間はかなりの時間、動かずにいる必要がありました。

もし撮影中に動いてしまうと、顔や姿勢がぶれた写真ができあがってしまいます。

江戸末期から明治時代の偉人たちの写真を現代でみれるのは、彼らが撮影中に不動を貫いていたからです。

その後シャッタースピードの改良が行われ、飛んでいく野球のボールや銃弾でさえも、鮮明に捉えられるようになっています。

写真に記録される映像がどれだけ詳細であるかを示す値として解像度という概念がありますが、撮影に要するシャッタースピードの加速は「時間の解像度」が上がったと解釈できます。

しかし物理学者が扱う粒子の速度は、ボールや銃弾の比ではありません。

たとえば一般的な固体中の電子の速度は秒速数千kmにも及びます。

(※粒子加速器などを用いいることで、電子を光速の99.999%ほどまで加速させることも可能です。)

このような超高速の粒子を撮影するのに必要とされるシャッタースピードは「アト秒」レベルになります。

1アト秒は100京分の1秒(1,000,000,000,000,000,000分の1秒)となります。

しかしこれまで開発された最先端の画像化ツールの時間の解像度は数十フェトム秒に留まっています。