本稿は「ママ活詐欺に引っかかった人にインタビュー→からの再潜入してみた<前編>」に続く、潜入レポート編です。
前編最後で、ママ活アカウントの現在と、実際にやり取りを行っていた一般ユーザー「Sさん」へのインタビュー内容を掲載しましたが、本稿ではSさんからタレコミのあったママ活アカウントと接触。
前回潜入時との流れの違いを確認しつつ、さらに別のルートで繋がったママ活アカウントとも接触してその手口を紹介していきます。
■ Sさんが実際にやり取りを行ったママ活LINEアカウントとやり取り開始
まずは、Sさんが実際にやり取りを行ったママ活LINEアカウント「○♡」に連絡を取ります。弊社の潜入用LINEアカウントに友達追加をすると……程なくして相手からメッセージが届きました。
「追加は出来ましたか?」
前回、Sさんとのやり取りで流れは把握できていますが、あくまで知らないフリをし、慎重に話を聞いていきます。ママ活についてのルールやマナー等について、画像や動画を用いてこと細かく説明を受けますが……すまん、もう全部知ってるんだ。
一通り案内が終わると、希望の地域、年齢を聞かれたので、相手の反応を見るため「東京都青ヶ島村、40歳」と少しイジワルな回答をしてみました。
東京都青ヶ島村は東京都の伊豆諸島南部にある青ヶ島を区域とする村であり、日本の地方自治体において”最も人口の少ない村”として知られています。そういう場所を指定したらどう反応するのか?
さすがに無理だろう……と思っていると、「そちらの地域であれば、近隣の方々のご紹介も可能かと存じます」との返事が。
絶対この人、青ヶ島のこと知らない……。「○♡」の中の人はマニュアル通りにしか動くことができず、どのエリアを言われようが「紹介可能」と答えているのでしょう。とりあえず続くようなので、このままやり取りを続けていきます。
次に、女性との注意事項やデート内容、お小遣いについて、動画で説明が行われました。といっても、パワーポイントで作ったような資料だけが表示される動画です。
一通り確認すると、いよいよママ活相手の女性が3名紹介されました。「Sa」「M」「K」……って、Saは前編でSさんがやり取りした人と同じやないかい!
もしも本当に同一であれば、「さえ」がでてくるはず。ここは「Sa」さんを選択する旨を伝えると、突然ここまで説明があったマナーについての復習動画を見させられました……。長い。
そして次に……再び別の動画が投稿されました。しかし今度はついに紹介の対価として無料or有料のサイト登録を促す内容。
この無料or有料のサイト登録を促す部分ですが、昨年の潜入時には選ぶ選択肢はありませんでした。ただSさんからの話では、無料か有料か選ばされた、という話なので今回に関してはもう何から何まで同じ。新しい流れとしてマニュアル化されているようです。
もちろんここでは「無料」の登録を伝えたところ……なんとここで「○♡」の動きが停止。以降、既読も付かなくなってしまいました。これはもしや……バレてしまったか?東京都青ヶ島村はやはり攻めすぎだったかな……。
とはいえ、ここまでの流れはSさんのやり取りと同一であり、こちらの居住地域に関わらず同じ相手を紹介してくるあたりも、説明はほぼテンプレート化しているものと考えて良いでしょう。
また、昨年からの大きな違いはやはり小まめに出てくる説明用資料の充実。昨年はわりと簡素な資料でしたが、今回に関しては数も豊富でデザイン性も少し凝ったものになり、よりビジネス的になっていました。ママ活界隈でも業務効率化が進められているのかもしれません。
■ 全く同じ手口の別のママ活アカウントと接触
Sさんからの被害報告で、先の「○♡」を介したママ活は、何らかのサイト登録をさせるだけさせて、実際にママを紹介する気がないのは判明しています。
しかし筆者との接触では怪しまれたのか、途中までしかルートが確認できなかったので、恐らく同じ手口(仲間)だろうと思われる、別のママ活アカウントともやり取りを行ってみます。
こちらはSさんのパターン同様、筆者のXアカウントに直接DMを送ってきた相手。普段ならスルー一択の相手ですが、今回はあえて誘いに乗ってみます。
これまでと同じくLINEに誘導されたため、アカウントを追加すると、「ミホ」というアカウントが登録されました。この「ミホ」もまた仲介担当者であり、ママ活希望女性と男性をマッチングさせる役割を担っているようです。
ここでは居住地、名前(ニックネーム)、年齢を聞かれたため、「鹿児島県」と回答。名前と年齢は適当に入力すると、10分ほどで条件に合うママが3名紹介されました。早ッ!
先の仲介役「○♡」とは明らかに違うスピード感です。質問内容はほぼ同じものの、より段取りが効率化されている印象です。
しかし大筋は似ているため、2人は同じマニュアルを使用している可能性が高いと考えます。大筋の流れはマニュアルに従い、細かい流れは各担当者がアレンジしているのかもしれません。
とりあえず、ここは何となくのフィーリングで3の女性を選択。
3の女性のお名前は「まい」というそうで、簡単な希望条件を説明された後、OKであれば「まい」の個人LINEを教えるのでそちらでやり取りを開始する、という流れのようです。
会う頻度やお小遣いの金額、デート内容など簡単な条件を提示されますが、それくらいなら当然問題なし。返事を行うと、「まい」の個人LINEを教えてもらえました。こちらのママ活アカウントでは、どうやら三者によるグループトーク形式ではなく、初めから個人間でやり取りを行うようです。
早速まいさんを友達に追加し、軽く挨拶を行うとすぐに返事がありました。初対面の割にノリが良く、すぐにでも会って食事を行う流れになりましたが……こちらがどんな男性かとか、いろいろ聞かなくて良いのだろうか。こういうところが雑だなぁと感じました。余談ですが、この辺はロマンス詐欺の方が、丁寧です。(過去の潜入経験より)
■ やり取りを行っていると「ミホ」からサイト登録の案内が
何通かやり取りを行っていると、ここで再び仲介者の「ミホ」から連絡が。やはり女性の紹介はタダというわけではなく、「月額サイトへの登録」が必要なのだと言います。
しかも、今回は有料無料選べるわけではなく、初めから有料サイトのみ。「5~6個分で1万1000円分ほど」で、登録後即時退会もOKなのだそう。説明によると、この費用はママとのデートですぐに回収できるということですが、こちとらビタ一文、支払う気はありません。
とはいえ、それでは話が進みませんので、一応ポーズだけ見せて、行けるところまで行くことにします。
了承したフリをして、要登録サイトを教えてもらうと……時代錯誤も甚だしい「壁紙ダウンロード」や「オンラインゲーム」のサイトでした。
15年ほど前のスマートフォン黎明期を思い起こさせるような、サイトのロースペックぶりには逆の意味でビックリ。普通はこれに月額を払ってサービスを利用する人なんてまずいないでしょう。どう考えてもママ活からの流れで、釣られた人を登録させるためだけに作られたようなサイトです。
キャリア決済やクレジットカード情報の入力でサイト登録を促してきますが、何度か「登録できない」とゴネていると、そのうち既読がつかなくなり、連絡が途絶えてしまいました。「コイツは金にならない」と判断されたのでしょう。
一方、個人で連絡を取っていたママ活女性「まい」にも連絡をしてみましたが、こちらも応答なし。あんなにノリノリだったのに……。まぁ、去年の潜入でも感じましたがどうせ2人は仲間なのでしょう。もしかしたら同一人物だったのかもしれません。
なお、仲介者「ミホ」とのやり取りの中で、他にもいくつか分かったことがあります。1つは仲介者の業務時間がどうやら15時から23時とわりと固定されているということ。1日8時間勤務らしいですね。間に1時間休みを入れて7時間労働といったところでしょうか。
そしてもう一つはリンクに有効期限があったこと。仲介者のミホから送られてきたリンクを24時間放置していたら、そのリンクからは登録できなくなってしまいました。ミホ曰く、URLが長いので「短縮にした」とのこと。
そういう仕組みなら解約も自由に出来るとは限らない可能性があります。リンクが24時間しか有効ではないなら、解約しようにもできないのでは?と尋ねたところ、登録後に解約用のURLを送信するとのこと。解約用URLがなければ解約できないサービスなんて、怖すぎます。
ママ活アカウント再接触で分かったこと
今回の潜入調査はここまで。タレコミがあった相手と、筆者に直接コンタクトを取ってきた相手の2パターンのママ活アカウントとやり取りを行いました。
双方には「仲介役とママを含めたグループトークになる※orならない」「登録サイトが有料無料選べるor有料のみ」といった若干の違いこそありましたが、大筋は似かよっており、最終的には有料サイトへ誘導してクレジットカード情報ないし決済情報を入力させるというゴールは同じであるようです。
※筆者の潜入ではグループトークまでたどり着けていませんが、タレコミをしたSさんの場合はグループトークにさせられています。
以前の調査ではこのほか、有料のアダルトサイトへ誘導してきたり、出会い系(通称出会えない系)アプリへの登録を要求してきたりと、さまざまな手段で個人情報をだまし取ろうとしてきました。もしかすると今回も登録を進めていけば、最終的には同じようにアダルトサイトなども登録させられたのかもしれません。
なお、手口に変更があったかどうか一番気になっているのは、やはり記事公開後の「脅し」。前回は記事公開後に問い合わせ窓口を通じて送信してきました。LINEには鬼電も。もしこの点、前回と手口が変わっていないなら、記事公開後に再び脅迫する文章を送ってきてもおかしくありません。そうなったらそうなったで、追記して記事を更新する予定です。
前編でも触れましたが、ママ活のようなおいしい誘いが100%存在しない、と断言はできませんが、99.9%あり得ない話です。投資詐欺にせよ、ロマンス詐欺にせよ、事がうまくいっているときほど油断は禁物。ホイホイついていって気付けばお金を失っていた……なんてことにならぬよう、慎重に行動するようにしてください。
なお、今回接触した2つのママ活アカウントは同時期に連絡が取れなくなったこともあり、もしかすると編集部の潜入用アカウントの情報が界隈でバレはじめているのかもしれません……。やはり怪しい話には手を出さない、ことが正解と言えそうです。
<記事化協力>
Sさん(仮名)
(山口弘剛)
提供元・おたくま経済新聞
【関連記事】
・ロレックスはもう時代遅れ?富裕層が熱狂する2つの時計ブランド
・初心者が摂りたい筋トレの効果を高めるサプリ4選
・筋トレと有酸素運動、順番はどちらが先か?理由と効果を解説
・筋トレBIG3とは?忙しい人こそ実践したいトレーニングを紹介
・初心者向け!ネット証券ランキング