カンロ「ピュレグミ」が首位に

 グミに対する消費者の思いも聞いてきたが、次のような点を挙げる人が多かった。

「いろんな味を楽しむことができ、さまざまな種類や食感が楽しいです」(20代女性)

 ブランド別順位では変化が起きた。長年首位だった「果汁グミ」(明治)にかわって2022年から「ピュレグミ」(カンロ)が首位となり、2023年の順位は次の結果になった。

グミ市場、10年前の3倍に急拡大…フルーツ感と噛み心地にも変化
(画像=『Business Journal』より 引用)

 カンロの河野亜紀さん(ピュレグミ・カンデミーナ ブランドリーダー)は、最近の実績と躍進の理由をこう説明する。

「ブランド全体ではグミブランド売上No.1(DATA: 株式会社インテージSRI+ グミ市場2023 年4 月~2024 年3 月累計販売金額)を維持し、累計販売数は12億袋を突破しました。

 好調要因としては、ピュレグミの情緒的訴求が挙げられます。直近3年間では、カラフルなパッケージや、見つけるとうれしいシークレット型、底面メッセージやカラーストーリー、気持ちを前向きにさせるプロモーション施策など、“ピュレグミがそばにあることでトキメキ、気持ちが上がる”という価値を意識的に伝え続けてきました」(河野さん)

グミ市場、10年前の3倍に急拡大…フルーツ感と噛み心地にも変化
(画像=「ピュレグミ」の商品例(筆者撮影),『Business Journal』より 引用)

 同社から「ピュレグミ」が発売されたのは2002年。発売当初から大人の女性をメインターゲットにした。同ブランドは右肩上がりの後に伸び悩み、2015年頃から商品のリニューアル、ラインナップ拡充などを行い、近年の好調さにつなげている。“きゅんと、果肉食感”を掲げる「ピュレグミ」、“濃密果実ジュレin”を掲げる「ピュレグミプレミアム」などで市場を攻める。2013年には男性向けに「カンデミーナグミ」も発売した。

一番人気は「ぶどう」系、「噛み心地」には変化

 ちなみに「グミ」の人気フレーバーは、昔も今も変わらない。

「一番人気はぶどう味(グレープ)で、どのブランドもぶどう味が強いと思います。ゼラチンとの相性が良く、ジューシーさが感じられるのでしょう。『果汁グミ』も“ぶどう”が1位で、2位が“温州みかん”、3位が“マスカット”です」(明治の福島さん)

「業界全体としてぶどう味が一番人気ですが、グミは味×食感の表現のしやすさからフルーツ以外にも、炭酸飲料系や、グルメ系へも広がりを見せています。

 また、最近ではインバウンド需要から、とろりとした食感の『ピュレグミプレミアム』シリーズの“山梨産白桃”味も非常に人気となっています」(カンロの河野さん)

 一方、硬さは商品によって違う。「果汁グミ」はやわらかい噛み心地。「ピュレグミ」は少し硬く、きちんとした噛み具合だ。

 外国製で人気の「ハリボー(HARIBO)」(原産国ドイツ。取扱いは三菱食品)は非常に硬い。クマのグミで知られるハリボーは100年以上前に誕生し、欧州ではおなじみのブランド。日本でもファンを拡大し、上記の表に示したように存在感を高めている。

 近年は硬いグミを好む人も増え、ネット情報で「ハードグミ人気おすすめランキング」が紹介されるほどだ。メーカーもそうした消費者の変化を意識する。やわらかさが持ち味だった果汁グミからも2022年に「果汁グミ 弾力プラス」というシリーズが登場した。

今後の課題は「喫食未経験者」と「休眠客」

 市場拡大を続けるグミだが、課題も残る。カンロの河野さんはこう指摘する。

「実は、日本のグミ喫食率はまだ50%にも達していないのです。また、ピュレグミは発売22年になりますが、過去に喫食経験がありながら最近食べていない休眠層の方も多くおられます。未経験の方や休眠層の方に手に取っていただく機会を訴求していきます」

 明治の福島さんも「日本のグミ喫食率は約45%なので消費者と商品の出合いを増やしたい」と同じ指摘をした。自社ブランドについては「“果汁100”や“着色料不使用”といったブランドの本質は維持しつつ、消費者訴求には少し遊び心も取り入れたい」と話す。

 前述したように欧州では誕生100年超のグミだが、日本では同40年程度。喫食率90%を超えるチョコレートなどに比べて未経験者も多いのだ。

 休眠層に対しては、たとえば「家庭用アイスクリーム」の事例が参考になりそうだ。近年好調なアイス市場は大人に人気で、高齢層の支持も高い。

 喫食再開のきっかけは、特に男性の場合、「定年退職により外で飲酒や会食機会が減って自宅時間も増えた。そこで久しぶりにアイスを食べたら美味しかった。それ以来、手軽な息抜きとしてアイスを食べる定年世代が増加した」――という話を取材で聞いてきた。

 グミもアイスと同様100円や200円で買えるので、訴求次第で可能性が広がるだろう。

(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

提供元・Business Journal

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