官僚が求められる能力に変化

 何をもって人材の質と評価するかは職業によって異なるが、国家公務員は近年、人事評価のあり方が変わったという。

「国家公務員試験で試しているのは基本的に問題処理能力である。知識の量や思考の柔らかさが必要なので、それも試してはいるが、比重的にいえば、与えられた時間で、正確に問題を解けるかどうかを見るのが大きいのではないか。その意味では、大学受験の能力とさほど変わらない。入省後の昇進は、90年代に政治主導体制が築かれる以前は、国家公務員試験の成績や出身大学、OBを含めた仲間内の評判などによって決定されてきたが、内閣人事局に典型的に見られるように、政治主導体制になってからは、政治への対応が求められることもあり、ポジションが上になればなるほど、求められる能力が大きく変わってきている。局長クラスになれば、政局や社会の先行きを見通す力、政治からの指示などに対して冷静な対応ができるかどうかなど、ペーパーテストで試されるような知識や事務処理能力以外の能力が重視されるようになった」(中野氏)

 人事評価にはこんな一面もある。ある厚労省キャリアOBが自らの経験を打ち明けてくれた。このOBは内閣府に出向した期間に受けた評価はAランクだったが、厚労省に復帰したらCランクの評価が付けられた。

「内閣府では評価されたのに厚労省での評価が低かったのは、国益にかなった仕事をしたけど、その仕事が厚労省の省益にマイナスだったからだ。こういう矛盾があるから、各省庁からの出向者は腰を据えずに、所属省庁を向いて仕事をするようになってしまう」

 こうした実態が知れわたるようになると、他大学よりも就職先の選択肢が多い東大生にとって、官僚の魅力が薄れて「憧れの職業」から外れていく。国家公務員試験の合格者が減少傾向をたどるのは必然である。