将来のBWRの安全のためにこの場で指摘するとともに、原子炉を試験使用承認する前に実証的機能確認を行うことを原子力規制委員会に強く要望します。

  1. 物理現象(吹き出し蒸気の流動様式の変化)

    原子炉の圧力を急速に下げる時には、主蒸気逃がし安全弁を開放して炉内の蒸気を放出することによって原子炉の圧力を下げていきます。この際、炉内の圧力が高いときは吹き出す蒸気流れは流路面積が最も狭くなる弁の内部で音速に達しており「臨界流」と呼ばれます。

    物理現象として臨界流である時には、下流側(格納容器側)の低い圧力の影響は上流側(原子炉側)に伝播しないので、上流側にあたる炉内の圧力だけに比例して吹き出し流量が決まります。下流側にあたる格納容器の圧力が上昇していない通常運転時には、原子炉の圧力範囲の大部分を臨界流として扱っていて問題ない範囲です。

    一方長時間の電源喪失などにより格納容器側にエネルギーが蓄積して、格納容器の圧力が高くなっている状態で原子炉の減圧を行うと、原子炉の圧力(絶対圧)が格納容器の圧力(絶対圧の1.85(=1/0.54)倍程度以下となるポイントで吹き出し流れの速度が音速を下回り亜音速流に変化します。

    吹き出し流れが亜音速となると、下流側の圧力の影響が上流側に伝播するようになり、原子炉内で蒸気の減圧・膨張が起きるため吹き出し流量(質量流量)が急激に低下します。

    つまり格納容器圧力が高くなってから原子炉の減圧を行うと、必然的な物理現象として原子炉の圧力が低下して行く途中で、吹き出し蒸気の流動様式が切り替わり減圧速度が急激に低下するポイントを通過することとなります。

    流動様式が変化するポイント以下の圧力範囲では、臨界流ではなく亜音速流を前提とした低い吹き出し流量を用いて計算する必要があります。

    格納容器圧力が低い通常状態と同じつもりで全ての圧力範囲を臨界流として計算していると、格納容器圧力が高く原子炉圧力が低い場合には実現象を超えた過大な吹き出し流量を見積もっていることとなります。計算の上ではスムースに原子炉の減圧ができると考えていても、実際には流動様式の変化によって原子炉の減圧が思うように進まないという事態に陥ります。

  2. MAAPコードを過信していてはいけない