たとえばヘビ(アメリカマムシ)を調べた研究では、以前の戦いで負けたヘビは、次の相手より自分が10%大きくても、つまり実力的にかなり有利であっても「必ず負ける」ことが示されました。

またザリガニを用いた研究では、平均よりも小さいオスが大きな相手に戦って勝利すると、その後に大きな相手と戦った場合でも勝率が70%になることが示されました。

大金星は個体の競争力を本当に強くしていたのです。

一方で、小さい相手に負けてしまった大きなオスは、実力的に有利にもかかわらず、その後の戦いで勝てる確率は6%しかないことが示されました。

大金星が小さなオスを強化した一方で、大黒星は大きなオスを弱体化させてしまったわけです。

これらの結果は、直前の勝利が実力を遥かに上回る、勝敗の決定要因になっていることを示しています。

では人間の場合どうなのでしょうか?

人間も勝者敗者効果からは逃れられない

人間にも勝者敗者効果は表れるのか?

研究者たちが人間のテニス選手を対象に勝者敗者効果の検証を行ったところ、動物に非常によく似た影響が観察されました。

この研究ではテニスの第1セットのが僅差のポイントで決まったときに、つまり直前までほとんど点数差がなかった場合、第2セットの成績がどうなるかを調べました。

もし第1セットの内容が引き継がれた場合、第2セットでも点数は僅差となりやすく、一方の選手が勝つ確率は50%に収束するでしょう。

しかし結果は違いました。

第1セットで僅差の勝利を収めたプレーヤーは第2セットで勝つ確率は50%ではなく60%と高くなっていたのです。

この結果は、勝者敗者効果が連続した対戦でも発生することを示しています。

興味深いことに、このようなテニスでの勝者敗者効果が出現するのは男性プレーヤーだけであり、女性プレーヤーではみられませんでした。

また別の研究では、試合後の血中成分の分析を行うと、テニスで勝ったプレーヤーは血中のテストステロン値が上昇し、敗者は逆に低下することが示されました。

勝者敗者効果はセット制のスポーツにおいて甚大な影響力を誇ります
勝者敗者効果はセット制のスポーツにおいて甚大な影響力を誇ります / Credit:Canva . 川勝康弘