気候変動分析サイト、カーボン・ブリーフの調査によると、トランプ氏の政策では40億トンの温室効果ガスが大気中に追加される可能性があるという。

トランプ氏が再選されれば、パリ協定からの再離脱は必至であると見られている。EUなどのエリートは、地球温暖化による壊滅的な影響を回避しなければならないときに、アメリカの再脱退が進展を遅らせることを恐れている。

要約すれば、トランプ氏は、化石燃料を燃やす発電所からの汚染を削減するバイデン大統領の政策を中止し、EVを奨励する取り組みを終了させ、国内に賦存する石油とガスを促進することを宣言したのである。

第二次トランプ政権が始動すれば、一次よりはるかに組織的で首尾一貫した法的・規制的戦略になるだろうし、バイデン氏の気候変動アジェンダからの180度の転換もより効率的に進むだろう。

ナラティブといえば、パリ・オリンピックの開会式にはDE&I、LGBTQ、SDGs、Net Zeroなどがふんだんに盛り込まれており、見るに堪えなかった。アスリート・ファーストであるべき選手村の食事や設備も相当にひどかったと聞く。パリに憧れていた多くの人たちに、幻滅感を与えてしまったのではないだろうか。

こうした事態の根底には、EUのトップエリートが造り上げてきた空想社会主義的ナラティブがあり、例えば、オリンピックではアスリートに配慮が行き届かなかったことや、日々の生活の中においては、EUが農業者を廃業に追い込むなどの環境政策を導入するなどを行ってきた。

これに対して、EU各国で農業従事者の抗議デモ(トラクターデモ)が起きており、トラクターで道路を塞ぎ、港湾を封鎖し、欧州議会に卵を投げつけるなどを行っている。抗議の対象は、環境に絡む規制から度を超えた官僚主義まで多岐にわたる。この抗議運動は拡大している。

最後に、我が国の気候変動に対する今後の対応であるが、EUが制度設計してきた「気候変動運動」に対して、政府は2050年までにカーボンニュートラル、GXを達成するなどの目標を掲げ、脱炭素政策を進めてきた。そのために膨大な税金が投じられ、大幅なCO2削減を達成しようとしているが、気温に対する効果は微小であるに過ぎない。