トランプ氏は、これらの規制は米国経済を弱体化させるものであり、自動車産業を衰退させ、失業者を増大させると述べている。トランプ氏は、これらの規制を撤回することを約束しており、当選した暁には、これが最初の仕事になるだろうと言われている。
【筆者コメント】 日本でも、2020年10月に菅首相が行った「2050年カーボンニュートラル達成宣言」の中で、2035年以降の新車販売はEVのみという発表があった。EV化の進展に伴う産業の弱体化や国内550万人の雇用問題がクローズアップされた。仮にCO2が問題であるとしても、エンジン車に対するEVの優位性が出るのは走行距離10万キロ以上のことで、バッテリーを交換しようものなら、製造時のCO2がさらに上乗せされるため、EVが環境に配慮しているとは到底言えない。
3. インフレ抑制法バイデン氏が2022年に署名したインフレ抑制法(IRA)は、気候変動対策に、国家レベルで最大の投資をするものだ。10年間で3700億ドル以上の税額控除が盛り込まれ、米国をよりクリーンなエネルギー形態へとシフトさせることを支援するものである。
EVやバッテリーを製造する企業やそれらの車を購入したり、太陽エネルギーに切り替えたり、自宅の冷暖房に電気ヒートポンプなどを購入したりする消費者にインセンティブが与えられる。
トランプ氏は、このIRAを「史上最大の増税」と呼んでいる。この法律の大部分が廃止されるという見方が強い。EV購入のためのインセンティブは、トランプ氏が「最も愚かな」決定のひとつと呼ぶもので、間違いなく廃止の俎上に載るだろうと言う共和党もいる。充電ステーションを設置する企業を支援する施策も同様のようだ。
太陽光発電や風力発電に対する税控除も、ヒートポンプの購入などに対する消費者への優遇措置と同様に、共和党政権の逆鱗に触れる可能性がある。しかし、バッテリー製造施設やEV工場の多くが共和党の選挙区に建設されていることもあり、共和党の気候変動法反対派でさえ、これらの優遇税制を廃止するのは難しいと認めている。