注射器の中に空気が入っていると容易に押したり引っ張ったりができます。
しかし水が入っている場合、どんなに力を込めて押したり引いたりしても微動だにしません。
今回の実験でもダイヤモンドと柔軟な物質が接触したことで水で満たされた大量のナノポケットが出現し、それが水で満たされた注射器のように、引きはがす力に強力に抵抗したと考えられます。
このような引きはがしへの強い抵抗力増加は、乾燥した状態では起こりません。
研究者たちは濡れた壁を駆け上るヤモリや海中のムール貝たちも同じような仕組みで接着を維持している可能性があると述べています。
また今回の研究によって、乾燥した状態で考えられる摩擦や接着力の理論では、水がある状態を上手く予測できないことが示されました。
そのため「水はタイヤを滑らせるのに、なぜ指に水を付けると滑りにくくなるのか?」という疑問も水の層の厚さ以外に、(より正確には)水を含んだナノポケットの存在も関与していると言えるでしょう。
研究者たちは今回の研究成果を応用することで、水中でも機能する多様な接着剤を開発する助けになると述べています。
もしかしたら未来の絆創膏は、お風呂に入っている状態でも、水のナノポケットを利用して皮膚にしっかり張り付くようになっているかもしれません。
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参考文献
Water Does Not Always Make Surfaces Slippy, Study Suggests
https://www.technologynetworks.com/tn/news/water-does-not-always-make-surfaces-slippy-study-suggests-389675
元論文
Small-scale roughness entraps water and controls underwater adhesion
https://doi.org/10.1126/sciadv.adn8343