この経験は今でも役立っていて、自分はネットで煽られたり侮辱するコメントがついても、怒って応酬せずに、一切反応しない人格を得ることができた。限られた時間やメンタルのリソースは自分を応援してくれる人や、真に手を差し伸べたくなる人へ使うべきである。

厳しさに慣れる

昨今、「厳しい会社、厳しい人と働きたくない」という意見をよく見る。自分は職人気質の非常に厳しい上司と仕事をしていた時期があったのでこの気持ちはよく分かる。

自分が過去に経験した上司は仕事の結果に非常に厳しいだけでなく、時にはバインダーを机にバシンと叩きつけて大声で怒鳴る恫喝もあった。今なら完全にパワハラである。最初の頃はそれをされるたびに、氷の手で心臓を鷲掴みされるような恐怖を感じた。

しかし、3ヶ月、半年も経過すると段々と恫喝にも慣れてくる。さすがに威嚇はしても直接殴るまでのことはしてこないので、「普通に口頭で説明してもらえば理解できますよ」と自分は生意気に言い返すようになったものである。同僚との飲み会でキレる上司のモノマネをして、笑いを取るほどに耐性がついた。

こうした厳しい仕事に慣れると、その後の人生でどれだけ厳しい人を相手にしてもまったく動じなくなる。激しく声を荒げられても(普通の音量で話してもらっても十分聞こえるよ)という落ち着いた対応ができるし、感情的に来られれば来られるほど逆にこちらは氷のように冷静な感覚になっていく。

おそらくこれは過去のパワハラ経験から、感情的な相手が最も苦手なのはその対極の理性的な相手であることを肌感覚的に体得したためだ。感情的に来る人は、相手も同じように感情的になってほしいという願望を持っている。だが、そこで相手に乗せられたら負けである。一方的に怒り続けることは不可能なので、冷静に淡々と対応する方が最後には必ず勝つのだ。

反骨精神が育つ

最後は「負けてたまるか」という反骨精神が育つ。パワハラ上司はお世辞にも尊敬できる人格の持ち主とは言えない。人間関係におけるリスペクトがなく、正直暴力でストレス解消をしているだけと感じる人もいた。