老後の備えのために、若い時期にしかできないことをひたすら我慢し、必要な自己研鑽まで節約するというのはトータルでは損をするということがわかってきた。将来の備えは思っていたほどバラ色の老後を約束するわけではないのだ。むしろ、過剰な備えで若い頃にしかできない経験をロストするリスクは確実な後悔になるだろう。

誤解2. 収入はマクロ環境で決まる

自分は就職氷河期で、遅く入学した大学を出た直後にリーマン・ショックを食らったので、「経済状況が就職に与える影響の大きさ」は人一倍、肌感覚で理解しているつもりである。

そこを理解した上で「それでも収入の多寡はマクロ環境で決まるという考えは必ずしも決定的ではない」と意見を主張したい(ゼロとは言わない。あくまで決定的ではない)。確かに不況より好景気の頃の方が何かと有利である事実は否定しない。実際、就職氷河期世代は非常に大変な思いをしたし、その後遺症に未だに苦しんでいる。

しかし、この理論は経済学的、社会学的には正しくても、あくまで個人レベルでいえばマクロ環境は本質的ではない。不況だろうがデフレだろうが、どんな時代でもやる人はやるし、逆境をはねのけて成功を手にする人はいる。その逆にどれだけ好景気でも、バブルという有利なトレンドにまったく乗れない人はいくらでもいる。「まあその気になった時に」とまるで永遠に追い風が続くと慢心してしまうことで、せっかくの目の前のチャンスを逃すからだ。

自分の場合、むしろリーマン・ショックで就活で非常に苦しんだからこそ、労働市場における好ましい振る舞いやビジネス感覚を学ぶことができたと思っているくらいで、その時の経験は未だに活きている。仮に当時、らくらく就活していたらビジネスの厳しさを舐めてあとから苦労することになっただろう。

正直、人生を変えるような挑戦をする時に「今は時期じゃない」とマクロ環境を意識してタイミングを伺っていたら一生何もできないまま終わる。

誤解3. 収入と苦労は比例する