ユーザー企業のノウハウ空洞化

 当サイトは24年6月23日付記事『システム障害、なぜ起こる?ユーザー企業のノウハウ空洞化、コンサルとの能力差』で、システム障害が起きる要因について検証していたが、以下に再掲載する。

※以下、肩書・時間表記・数字等は掲載当時のママ

――以下、再掲載(一部抜粋)――

 江崎グリコは4月に発生したシステム障害が原因で、ほぼすべてのチルド食品(冷蔵食品)が2カ月以上にわたり出荷停止に。ユニ・チャームでも5月に発生したシステム障害の影響で出荷遅延や販売停止が発生。両プロジェクトの主幹事ベンダが外資系のデロイト トーマツ コンサルティングである点も注目されているが、相次ぐシステム障害の要因としてベンダ側と発注するユーザ企業側の「情報の非対称性」があるのではないかという指摘がSNSで議論を呼んでいる。ベンダ側およびユーザ企業側に起因する問題、または両者の関係性に起因する問題としては何があるのか、専門家の見解を交えて追ってみたい。

 システム更新作業に伴う障害によってサービスに大きな影響が出るケースが後を絶たない。

 ユニ・チャームでも5月、一部商品について出荷が遅延。「日経クロステック」記事によれば、ゴールデンウイークに実施した基幹システムの更新で新基幹システムと物流システムの接続でデータ連係に不具合が生じたことが原因。更新したシステムはグリコ同様に「SAP S/4HANA」だったという。

 6月19日にはデリバリーサービス「出前館」のウェブサイトとアプリが利用できなくなる事象が発生。同社は原因について、システムの更新作業に起因するデータベースの不具合だと説明している。

 グリコとユニ・チャームのシステム更改プロジェクトについては、ともに主幹事ベンダがデロイトであると「ダイヤモンド・オンライン」が報じ、注目されているが、大手SIerのSEはいう。

「大規模なSAP案件はデロイトが強い領域なので、必然的に絶対数として同社が関与するプロジェクトの数は多い。システム作業に障害はつきものであり、また障害は複合的な要因で起きるケースが大半なので、デロイトにどこまで責任があるのかは判断できない。2社の件だけをもってデロイトを批判するのは無理があるものの、プロジェクト全体を推進する立場にある主幹ベンダであったのだとしたら、一定の責任は免れない」