エンジンをかけて走り出すと、その塊感が操舵に大きく影響していた。よくバイクのインプレッションで「マスの集中化」という言葉を聞くと思うがまさにそれで、核となるエンジンの周りにパーツが集中していることで、ライダーとバイクとの一体感がはっきりとわかる。

今回は主に箱根のワインディングでの試乗なのだが、エンジンの出力特性もわかりやすく、初じめて乗るにもかかわらず加速、ブレーキング、コーナーの進入タイミングなど、すぐにX500と仲良くなれたのが印象的だ。前後17インチのキャストホイールは小回りが効き、極太のφ50mm倒立フォークもしっかりとコーナーで踏ん張りタイヤのグリップ感も上々。なにより47ps/8500rpmのエンジンはトルクフルで、ワインディングでは5000rpmも回せば充分にスポーツ走行を楽しむことができる。

水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンは最大出力47hp/8500rpm、最大トルク46Nm/6000rpmで発揮する。ビッグツインのような鼓動感と振動はないが、360度クランクは本来振動を打ち消すテイストであるにもかかわらず、そこにはしっかりとしたパルス感があり、加速と共に気持ちよく回転が上がっていく。

またポジションに関しては820mmというシート高なので、165cm~170cm前後の標準的な日本人男性であれば、ほぼ足つきに不安はない。車両重量も208kgとこのクラスでは標準的なものなので、初心者や女性でも取り回しはそこまできつく感じないはずだ。

シート高は820mmと、このクラスではやや高めだが、そのぶん膝の曲がりが緩やかなので、乗車中の窮屈感はない。
ライダーの身長は168cm、体重75㎏。両足の前半分はしっかり着くので不安感はない。

往年のダートトラッカーをフィーチャーしたデザイン

X350はX500の弟分的なモデルだ。全体的な印象としてはX500に似ているが、タンク形状、フレーム、サスペンションの位置、サイレンサー、シートカウルなどあらゆるパーツが異なる。X500がアメリカンロードスターならば、こちらは1970年代にかつてハーレーダビッドソンが大活躍したダートトラッカーXR750のデザインをフィーチャーしたものだろう。ホワイトやオレンジのカラーリングだとX500よりもポップで躍動感のある印象。ラジエーターのシュラウドが近年スーパースポーツ界隈で人気の「ウイング」っぽいデザインなのも見逃せないポイントだ。エンジン形式はX500と同じ水冷並列2気筒DOHC4バルブの360度クランクだが排気量は353cc。つまり日本では普通二輪免許で運転できる、唯一のハーレーダビッドソンなのである。

ハーレーダビッドソンX350:69万9800円~
燃料タンク容量は13.5L。X500よりもスリムな印象なのに400cc多いのだ。
エンジンは水冷並列2気筒352.8cc。ボア×ストローク:70.5×45.2mmというショートストローク型だ。
このラジエーターをガードするシュラウドが近年流行中のウイングのようなデザインだ。
リアサスペンションはリンクを介さない軽量シンプルな直押し式モノショックを採用。
フラットトラッカーをイメージしたシートカウルには、ショートサイズのシートを装備。
ヘッドライトはX500と同様にイグニッションオンで、ロゴが浮かび上がる演出がにくい。
灯火類はすべてLEDで統一されている。

リズミカルで軽やかに回るエンジン