特に40Hzのガンマ波に焦点を当てた研究が進んでおり、この周波数の光または音の刺激が認知機能を改善する可能性が動物モデルで示されています。

40Hz(毎秒40回)の光と音がアルツハイマー病に効く仕組みを解明!【Nature誌】

また、アルツハイマー病患者ではアミロイドβの毒性が顕在化する前から、ガンマ波が減少していることが示唆されています。

同様のガンマ波の減少は、パーキンソン病、外傷性脳損傷、自閉症スペクトラム障害、うつ病、統合失調症などでも確認されています。

この結果から、脳外からのガンマ波の供給が、脳内でガンマ波を誘発し、それが認知機能や記憶に影響を与える可能性が示唆されています。

海外から石油を輸入して火力発電所を動かすように、不足しているガンマ波を外部から取り入れて認知機能や記憶能力を活性化させるわけです。

しかし光や音を使ってガンマ波を延々と取り込み続けるのは、目や耳にとって負担になります。

なにより直接的な刺激と異なり、途中に感覚器官を挟む方法は、効率的とは言えません。

そこで今回カリフォルニア大学の研究者たちは、ガンマ波を外部からの供給に頼る代わりに、脳内で直接発生させ、ガンマ波を自給自足させる薬「DDL‐920」を開発しました。

脳内でガンマ波を発生させる薬「DDL‐920」

ガンマ波の自給自足を達成するために、研究者たちは「パルブアルブミン陽性介在ニューロン」と呼ばれる特殊なニューロンに注目しました。

このニューロンは、脳内でガンマ波を生成する役割を持っていることが知られています。

前述のとおり、アルツハイマー病患者ではガンマ波が大幅に減少し、その結果、認知や記憶に悪影響が及んでいます。

研究者たちはこのニューロンを強制的に活性化させる化合物の探索に取り組みました。

特に注目されたのが、パルブアルブミン陽性介在ニューロン表面に存在する「γ-アミノ酪酸A受容体」(GABA_A受容体)です。