では土星の環はなぜそんなに薄いのでしょうか? その理由は次のように説明できます。

下の図は土星の環に垂直な方向から見た環のモデルです。土星に近い場所に粒子aがあり、遠い場所に粒子bがありいずれも土星の周りをまわっています。

土星の環の力学1
土星の環の力学1 / Credit:創造情報研究所

粒子aは土星に近いためより強い重力が働きますが、土星の周りを速いスピードで回転しているため、回転による遠心力と重力が釣り合っています。粒子bに働く重力は弱いため、aよりも遅い回転速度の場合に遠心力と重力が釣り合います。

粒子aの場合も粒子bの場合も軌道は安定しています。このように粒子の運動エネルギーに応じて安定な軌道が存在するため、土星からの距離のバラツキが大きくなります。これが土星の環の幅が広い理由です。

さて、もし土星の環にもっと厚みがあったとしたらどうなるでしょうか。次の図はその場合の土星の環を横から見たものです。

土星の環の力学2
土星の環の力学2 / Credit:創造情報研究所

北側に環A、赤道付近に環B、南側に環Cがそれぞれあったとします。

AはBとCの重力によって赤道側に引き寄せられます。Cも同様にAとBの重力によって赤道側に引き寄せられます。一方、Bに対してAから働く重力とCから働く重力は釣り合っているのでBは動きません。結果としてA~Cの幅が極限まで小さくなります。

ところで見かけ上の問題とは別に、あと1億年ぐらいで土星の環が本当に消えてしまうという説があります。

なぜ、土星の環が消えていくのでしょうか?

それは土星の重力が原因です。環を構成する氷の粒子が、土星の重力によって徐々に土星本体に落下しているからです。

土星の環は氷の粒からできていますが、その氷の粒が環に留まっていられるのは、土星本体からの重力と環の回転による遠心力とが釣り合っているからです。しかし、太陽の紫外線などで氷の粒が帯電すると、力のつり合いが崩れて、氷は土星の磁力線に沿って南北の中緯度地域に落下していきます。