2020年の時点で、新型コロナ感染後に数週間にわたり便のPCR検査が陽性となる事例が多数存在していることが報告されています。早い時期より腸管での新型コロナウイルスの増殖は注目されていました。現在は、持続感染はコロナ後遺症の原因の一つとされています。

宮沢氏の仮説を立証するには、接種群と未接種群との比較が必要です。この比較がないと、間接死が多いことは単にオミクロン株の特性ということになってしまいます。また、コロナ間接死の人数の確定も必要です。

ただし、厚労省は2022年~2023年の死亡の増加がコロナ関連死であることを認めているわけではありませんし、調査分析をする予定もないようです。つまり、コロナ間接死の人数は不明なのです。仮説としては興味深いのですが、検証は容易ではありません。

最後に、新書には超過死亡に関して不適切な記述があった点を指摘しておきます。

厚労省は2022年については超過死亡があったことを認めました。しかし、2023年には死亡者数の予測値を大幅に引き上げてきました(図4-2)。その結果、2023年には超過死亡が出ていないことになっています。そして、国は公式には2023年に超過死亡が出ていることを認めていません。

この記述では、「2023年の超過死亡がなかったことにするために、厚労省(感染研)が意図的に予測値を大幅に引き上げた」ように読めます。実際にはそのような事実はありません。つまり、2023年の超過死亡がでないように厚労省が計算方法を変更したという事実はないのです。

感染研は、過去5年のデータを基にして超過死亡数を算出してきました。2022年の死亡者数が極めて多かったため、予測値の計算に2022年のデータが含まれた結果、予測値が大幅に引き上がり、2023年の超過死亡がでなくなったということが事実なのです。厚労省が意図的なデータ操作をしたわけではありません。

この問題はネット論考で何回か指摘しましたし、論文でも指摘しています。感染研が提示する超過死亡数を解釈する場合には他にも様々な注意点がありますが、一般的にあまりこれらの問題は理解されておりません。 論文に詳しくまとめましたので興味のある方はご覧ください。