可変バルブタイミングを採用でパワーとトルクが向上した V ツインエンジン

853 cc エンジンは、現在すべての Moto Guzzi エンジンの構造スキームに従い、ローラータペットとアルミニウム製 ロッカーアームを備えたタイミングシステムに、V85TT においてはチタン製のφ42.5 mm 吸気バルブなどの優れたコンポーネントを導入当初より採用しています。
新しい V85TT のエンジンは、ユーロ 5+ 排出ガス規制に準拠し、さらに出力を向上させ、低回転でのスロットルレスポンス、つまりトルクを向上させるために大幅な改良が行われています。 これは、エンジン速度に応じてバルブリフトの作動法則を最適化する可変バルブ タイミングの技術を採用し、実現しています。
V85 TT エンジンの可変バルブタイミングシステムは、カムシャフトと同軸に配置された位相バリエータの溝に沿って遠心力により移動する 6 個のボールを利用するもので、これによりエンジン回転数が 6,500 rpm を超えると作動し始め、カムシャフトを回転させて 7000 rpm に最大値でカムを 7° (タイミングダイアグラム全体で14°) まで遅らせます。全開位置では、カムシャフトの巧みなタイミングにより、高回転域での吸気効率が促進され、出力が向上します。専用のタイミングセンサーがバリエータの位置を継続的に監視し、最適なエンジン パラメータ管理を可能にします。
トルクの増加は 3000 rpm という早い段階で顕著になり、トルク曲線全体に広がります。3500 rpm までに最大トルクの 90%を発生し、最大トルクは 5100 rpm で 83 Nm を発生します。これにより、さらに楽しいライディングを提供し、スロットルレスポンス及び低回転から高回転までフレキシブルに反応します。最高出力も先代モデルの76 hp / 7,500 rpm から 80 hp / 7,750 rpm へと飛躍的に向上しました。
もう 1 つの改良点は、ECU に重要なデータを供給するノックセンサーを追加し、点火時期のより正確な調整が可能となりました。これにより、パフォーマンスや快適性、信頼性の向上など、さまざまなメリットがもたらされます。
トルクの出力をよりスムーズにするためにエキゾーストシステムは、ユーロ 5+規格で要求される性能のために3 つ目のラムダセンサーが追加されました。
エンジンのその他の基本的な特性は変更されていません。潤滑には 2 つの同軸ポンプを使用したセミドライサンプ方式を採用し、1 つはオイル供給用、もう 1 つは回収用で、優れた潤滑性能を保証し、オイルクーラーの必要性を排除して重量の軽減に貢献しています。セミドライサンプ方式は、別体のオイルタンクは必要とせず、ドライサンプ方式の利点をすべて備えています。オイルパンの小型化は、アルミニウム製のアンダーガードを装着しつつ、十分な最低地上高を確保する事に成功しました。
インジェクションシステムはφ 52 mm のシングルスロットル ボディに、マルチマップ ライド・バイ・ワイヤ スロットル制御を採用します。これは正確なスロットル バルブ開度制御を可能にするシステムで、スムーズで確かな燃料供給効率を最適化するだけでなく、燃料消費量も削減します。V85 TT の OHV エンジンは構造上、パワーを吸収するコンポーネントがほとんどなく 、プッシュロッドとロッカーによるバルブ駆動は、パワーロスの少ない優れている方法のひとつで、冷却水のポンプや長いドライブチェーンまたはベルトが無いため、燃料消費量の点で非常に有利な特性を持っています。