ロズニツァ市近くのジャダル渓谷では、イギリス・オーストラリア企業リオ・ティントによる鉱山プロジェクトが進行中だ。西セルビアのゴルニェ・ネデリツェ村にある140ヘクタールの敷地に、2028年までに稼働予定という。

同社の推定によれば、年間5万8000トンのリチウムを生産できるという。これは約110万台の電気自動車の需要を賄い、ヨーロッパ全体の生産の約17%に相当するという。セルビア当局は、リチウム採掘に向けて、同国西部だけでなく、中央および東部においても68件のボーリング調査許可を既に承認済みだ(オーストリア通信)。

それに対し、環境保護活動家たちは、リチウム採掘が地下水を重金属で汚染し、周辺住民の飲料水供給に危険をもたらすと批判している。一方、セルビアのヴチッチ大統領は、リチウム採掘が地元住民の健康に及ぼす可能性のある影響を調査するために専門チームを設置する意向を発表している。ベオグラード政府は、原材料の採掘からバッテリー製造に至るまでの電動モビリティのバリューチェーンを構築することで、国家収入、雇用、投資が期待できると見積もっている。

参考までに、リチウム採掘作業に伴う環境と健康への影響について、専門家の意見をまとめる。

<リチウム採掘作業に伴う環境への影響について> ① 水資源への影響、リチウム採掘には大量の水が必要だ。特に塩湖からのリチウム抽出では、大量の塩水を蒸発させてリチウムを得るため、周辺地域の水資源が枯渇するリスクがある。 ② 土壌の汚染、化学薬品の使用:リチウムの精製プロセスには、硫酸や塩酸などの化学薬品が使用される。これらの薬品が適切に処理されないと、土壌が汚染され、周辺の生態系に悪影響を及ぼす。 ③ 大気汚染、粉塵:リチウム鉱石の採掘や処理過程で大量の粉塵が発生する。これが大気中に拡散し、呼吸器疾患を引き起こす可能性がある。 ④ 生態系への影響。リチウム採掘による土地開発は、現地の動植物の生息地を破壊し、生態系に大きな影響を与える。特に塩湖地域では、固有種の生物が絶滅する危険性がある。