セルビアの首都ベオグラードで10日、全国から集まった環境保護クループや市民たちが政府がボスニア国境付近で鉱山開発を再開し、大規模なリチウム採掘計画を推進していることに反対する抗議集会を開催した。

セルビアのクラグイェヴァツにある近代化されたステランティス工場での新しい電気自動車ライン立ち上げ記念式典に出席したヴチッチ大統領(右から2人目)(2024年7月22日、セルビア大統領府公式サイトから)

セルビアのメディアによると、数千人の人々が10日夜(現地時間)、ベオグラードの中心的な広場のテラジイェに集まり、政府の計画に抗議した。過去数週間にわたって都市や町で行われたリチウム採掘反対派の集会に続くものだ。参加者たちは「採掘を許さない」、「裏切りだ」と叫んだ。野党はデモ集会を主催していないが、反対派の抗議を支持している。

セルビアには数十億ユーロ相当の欧州最大級のリチウム埋蔵量がある。欧州連合(EU)は7月、セルビアと環境に配慮したリチウム採掘に向けた戦略的パートナーシップを想定した意向表明書に署名したばかりだ。それ以来、環境保護グループや国民は政府の計画を批判する抗議デモを繰り返してきた。

ちなみに、リチウムはボリビア、チリ、アルゼンチン、オーストラリアの他、米国、中国でも埋蔵されている。中国は特にリチウム電池の生産では世界有数の国だ。欧州は主にリチウムを中国から輸入してきたが、脱中国依存を掲げるEUはセルビアのリチウム採掘計画に期待している。

セルビアでは大規模なリチウム採掘計画が推進されたが、2年前、反対の声が高まり、一旦中断された。EUが化石燃料車から電気自動車(EV)への移行を打ち出し、推進してきたことから、リチウムへの需要が急増してきた。ちなみに、EVの主要なエネルギー源はリチウムイオンバッテリーだ。同バッテリーはリチウムイオンが電極間を移動することで電気を蓄えたり、放出したりする仕組みとなっている。