ソビエト連邦の金星探査計画において、ベネラ5号とベネラ6号は大気圏観測用の探査機として金星に降下しましたが、地表に到達する前に大気圧によって破壊されました。5号と6号は破壊されるまでの間、それぞれ53分と51分の間データを送信し続けました。
その後、1981年に金星に着陸したベネラ13号は、金星の地表で127分間活動をつづけました。これが金星表面での探査活動の最長記録です。このことから金星がどれだけ過酷な環境かということが分かるかと思います。
そんな金星でも、地表から高度50kmの雲の中なら住める可能性があります。そこでの気圧は地球の地表と同じちょうど1気圧。気温も30℃から50℃となっているので生命にとって快適です。
実際に、NASAは高高度金星運用コンセプト( HAVOC ) として金星への有人探査計画を発表しています。この計画では、最初にロボットを乗せた飛行船による探査の後、宇宙飛行士が飛行船に入り30日間試験的に生活を行ってデータを集めます。最終的には金星の上空に多数の宇宙ステーションを浮かべて本格的な移住を行うというものです。
ただし、この計画にはいくつかの課題があります。
まず、人間が生存するのに必要な酸素が金星にはほとんどありません。また、金星の雲の中では硫酸の雨が降っています。硫酸に触れると皮膚が侵されるので非常に危険です。
これらの課題については、以下の方法で対応可能です。
酸素については、酸素ボンベを用意することで解決できます。また、宇宙ステーションの中で植物を栽培することで作り出せるようになるかもしれません。硫酸雨に対しては、耐酸性の宇宙服で対抗できます。
地球から見るととても美しく輝いている金星ですが、その厚い雲の下はすさまじい世界のようです。
それでも人類は金星の謎の解明のために探査を続けるでしょう。将来的には金星の有人探査も可能になっているかもしれません。金星に人類が移住するのは高いハードルがあると思いますが、50km上空の空中都市というのはなんとも魅力的ですね。