■マグダレニア人:北西ヨーロッパ
約1万7000年前から1万2000年前の後期旧石器時代にかけて北西ヨーロッパで栄えていたマグダレニア人(Magdalenians)は先史時代の狩猟採集民である。彼らの少なくとも一部が人食いを行っていたことはわかっているのだが、その実態と理由については考古学者の間で議論の対象となっている。
この問題については2つの見方があり、人肉食はサバイバルの上で必然的であったのか、あるいは葬儀の儀式であり祖先崇拝の一形態であったかのどちらかである。
マグダレニア人が互いに食べ合っていた最良の証拠は、イギリスのガフ洞窟(Gough’s Cave)から出土した人骨の破片で、骨には共食いを示す特徴的な噛み跡が残されている。
骨を発見した研究チームは、噛み跡は葬儀の証拠であり、人肉の消費が象徴的または儀式的な意味を持っていた可能性があり、潜在的に故人を讃え、その力や本質を共同体に組み入れ、あるいは奉仕する先祖崇拝の一形態である可能性があると理論づけた。
しかしこの理論に誰もが納得しているわけではなく、マグダレニア人は狩猟採集民であり、別の観点からは、過酷な環境条件により食料が不足したとき、彼らは人肉食に走ったという説もある。この場合、それは死者を讃えることとは何の関係もなく、単に生き残るための最後の手段であった。
証拠は限られており、その中に決定的なものはないため議論はまだしばらく続きそうだ。理由が何であれマグダレニア人の間に人食いの習慣が実際に存在していたのだとすれば、古代文化の複雑さと過酷で容赦のない環境での生存戦略において彼らが直面していた課題について貴重な洞察を提供することになる。