■「自分が引っ越せば?」と疑問の声
こちらのツイートは、投稿から数日で2万件以上ものRTを記録するほど大きな話題に。
他のツイッターユーザーからは「自分が引っ越せば良いのでは…?」「これを騒音と捉える人もいるんですね」「この人自身は、防音対策を施したのでしょうか」「田んぼとこの人の家、どっちが先にあったのっていう話でしょ」「流石に酷すぎる」など、疑問の声が多数寄せられていた。
ツイート投稿主・いもっちさんは、犬の散歩中に件の張り紙を発見したという。周囲の環境については「それなりに田舎で畑も田んぼもありますが、見つけた場所は住宅地です」「草むらも川も多いので、これからの時期(6月)は、めちゃめちゃカエルが鳴きます」と説明していたが、張り紙の人物とは違って、カエルの鳴き声については別段気にしていない様子だ。

果たして、張り紙にもあるようにカエルは人間にとって「害」のある、駆除されるべき生き物なのだろうか。またカエルがいなくなってしまったら、この世界にどのような影響が起こり得るのだろうか。
今回は、これらの疑問をめぐって一般社団法人「日本爬虫類両生類協会」に、詳しい話を聞いてみることに。その結果、カエルの置かれている「予想外の立ち位置」に、驚かされたのだった…。
■カエルの「害」と「益」を比べてみると…
今回の取材を快諾してくれた日本爬虫類両生類協会の代表理事・白輪剛史氏は、複雑な思いでこの張り紙を見ていたという。
まず、この時期に日本の田んぼで見られるカエルの種類を確認したところ、こちらはニホンアマガエル、ツチガエル、シュレーゲルアオガエル、トノサマガエルの4つに大別されると判明。

続いては「なぜカエルは田んぼに生息するのか」「なぜ田んぼで鳴き続けるのか」という基本的な2点について確認してみる。
これらの質問に対し、白輪氏からは「水辺に近い草むらなどは雨が降ると移動しやすく、カエルにとって大きな生息地になります」「この時期には繁殖を目的としており、カエルの鳴き声はオスがメスに対する求愛のアピールになります」との回答が。
鳴き声は当然、大きければ大きいほど有効なアピールとなり、鳴き声を発するのはオスだけである。話題の張り紙はカエルのが鳴き声を「騒音」と捉えていたが、他にもカエルが人間にとって「有害」と見做される要素はあるのだろうか。

白輪氏は「ガラス窓に張り付いただけで嫌がるようなカエルが苦手な人は、雨が降ったときに道路に出てきたカエルを見て、スリップ事故などを起こしてしまうかもしれませんね」「また昨今話題になったように、食べ物に混入してしまう事例もあります」と回答を寄せているが…これらの事例を見てピンと来た人もいるだろう。
そう、カエルは「集団で農作物を食い荒らす」といった明確な害をもたらす存在ではないのだ。白輪氏は「強いて言うならば、カエルの粘膜は毒性のため、アマガエルなどを掴んだ子供がその手で目を擦ってしまう…などのケースは危険です」とも補足していたが、これも「人間が無理にカエルに干渉した場合」のみに起こる事例である。
むしろカエルは蚊や、不快な害虫を主食とする生き物であり、農作物の被害を軽減してくれる非常に有益な生き物。さらに病気の媒介となる昆虫を捕食し、我々人間が病気になるリスクをも抑えてくれる、いわば「頼れる隣人」なのだ。