このリブレット加工は、航空機の表面から水着の表面まで様々な場面で利用されています。

2008年北京オリンピックではレーザーレーサー(LZR Racer)という全身を覆う水着を着用した水泳選手が、次々に世界記録を更新してしまい、最終的に公式大会では水着で体表面を覆う割合が制限されるという自体に陥りました。

北京オリンピックを見ていた人たちは「水着1つでそんな変わるものなの?」と驚いたかもしれませんが、このレーザーレーサーに使われていた技術がリブレット加工です。

サメ肌を参考に作られた水着レーザーレーサーは北京オリンピックで世界記録を更新しまくり話題になった
サメ肌を参考に作られた水着レーザーレーサーは北京オリンピックで世界記録を更新しまくり話題になった / Credit:Wikimedia Commons

そのためリブレットの有効性は、もはや人類には常識となっていますが、意外なことに発想の源となった「ホホジロザメの楯鱗」が、水流への抵抗に対してどの程度の低減効果を持つかの詳しい特性については調べられていないのです。

というのも、ホホジロザメは知名度の高さに反して、標本や生態データを得るのが難しく、全身の広い範囲にわたる楯鱗の構造を調べることができなかったからです。

ホオジロザメ
ホオジロザメ / Credit: canva

そこでチームは今回、貴重なホホジロザメの全身標本を使って調査を行いました。

ホホジロザメの最適遊泳速度が判明!

本調査では国立博物館が所蔵するホホジロザメの全身ホルマリン漬け標本(全長3.16メートル、重量320キロ)を用いました。

チームは標本の全身にわたる17箇所から楯鱗サンプルを採取し、X線CTを使って3Dモデリングしています。

17箇所から楯鱗サンプルを採取
17箇所から楯鱗サンプルを採取 / Credit: 東京工業大学 – ホホジロザメの鱗の突起列は高速と低速の両方に適応(2024)

先ほど説明したように、ホホジロザメの楯鱗は大突起と小突起が前後に重なって列をなすように並んでいます。

このとき、隣り合う大突起と大突起の横幅(S2)は、大突起と小突起の横幅(S1)の約2倍になります(下図を参照)。