与党だったアワミ連盟は中道左派、民族主義党は中道右派ですが、国家そのものがイスラム教ベースで右派が票を伸ばすような土壌がないように感じられます。アラブの春を思い出していただければと思いますが、政権をひっくり返すのは簡単なのですが、国民は不満こそ口にすれど新たな国家を自分たちで築くのは極めて難しく、スクラッチからリーダーシップを取れる国民を主導できる人材はそういるわけではないのです。
そんな中、今回学生らが推挙した主導者はノーベル平和賞受賞者で経済学者のムハマド ユヌス氏。「グラミン銀行」を創設した人と言えば思い出す方もいらっしゃると思いますが、貧困を救うための少額融資の銀行を設立した方です。ユヌス氏は滞在先のフランスからダッカに戻るところで、最高顧問に就任することになっています。ただ、氏も84才と高齢であり、氏の政治的方針でより民主的になったとしても氏は社会ベネフィットを重視する経済学者であり、今般の学生の暴動の背景も職にありつけない若者の不満が爆発したものです。よって国家としてはアワミ連盟と同じ、中道左派を維持と予想しています。
何故私がバングラデシュをテーマで取り上げたかといえばいくつか理由があります。1つは日本企業が割と多く進出しており、アジアで残された最後の有望国の一つであること、もう一つは国民感情が日本に対して良好であることがあります。
中国がバングラデシュに対して触手を伸ばそうとしているもののハシナ政権下はインド寄りで中国とは比較的冷たい関係でした。事実、ハシナ氏が中国に訪問した際もバングラデシュにとってメリットが少ない交渉に終わったことを憤慨して予定より早めてさっさと帰国したこともありました。この辺りを含め、今後はインドや中国の外交的接触も増えてくるはずです。本来であれば日本もここで関与する方が良いのですが、日本の現政権にそこまで期待できる状態にはなく、総裁選も控えていることから様子見になると思います。