■美容師が気をつけていること

ただ、美容師側も客に対してやみくもに話しかけているわけではない。東京・新橋にある「LonaLona Clinic(ロナロナクリニック)」で美容師・毛髪診断士を務める佐藤誠治さんに、客との会話で心がけていることを聞いた。

「基本的に『お仕事は何をされていますか?』という質問はしません。以前から心がけていましたが、特にコロナ禍で業績が悪化している方もいれば良くなっている方もいるので、こちらから仕事の話題を振らないようにしています。また、恋愛など個人的なことには触れないようにしています。ただ、お客様によっては初回でもそうしたお話をされる方もいるので、お客様に合わせていますね」。

お店によって接客の仕方は異なる部分もあるだろうが、記者もこれまで訪れた美容院で仕事の話題を振られたことはない。

■コロナ禍になって変わったこと

コロナ禍で美容師も客もマスクを付ける光景が当たり前になりつつある。マスクを付けるようになったことで、変わった点もあるようだ。

「ドライヤーをかける時に『乾かしますね』と声をかけたら、こちらから話を振らないようにしています。ドライヤーをかけながら話をするとどうしても声のボリュームが大きくなり、他のお客様が飛沫を気にされる可能性がありますからね。コロナ以前からドライヤー中の会話は控えていましたが、飛沫対策をする意味でも髪の毛に関する最低限のことにとどめ、話す場面と話さない場面でメリハリをつけるようにしています」(前出・佐藤さん)。

客と話す中で他愛ない雑談になることもあるが、その際も注意を払っているという。「スタッフ一同、日頃から感染対策を徹底していますが、『旅行に行った』『居酒屋に行った』といった話題は避けるようにしています。自分達がプライベートで出かけたという話題であっても気にされるお客様がいますからね。そうしたお話をする際も『こういう対策をした』というのを付け加えるようにしています」(前出・佐藤さん)。