世の中には様々な記事があり、その信頼性も様々。特にSNSでは、一見信憑性がありそうな内容でも、実際にはデマであることがよくあります。このため現代社会では情報の真偽を確認することが非常に重要。
その確認方法の一つとして、情報が掲載されている場所が大手サイトかどうかという点が重要になってくるのですが、今回紹介するgooニュースに配信されている「読売新聞」の記事は本物なのでしょうか?
■ gooニュースに配信されている読売新聞?いいえ、全てがフェイクです
結論から言うと、今回紹介するサイト自体が偽物(フェイク)です。gooニュースのサイトデザインを模倣した偽gooニュースであり、読売新聞の名前を騙った偽記事です。
しかしパッと見では本物と全く同じデザインのため気づかない人は気づかないことでしょう。入り口はSNSにあった偽広告になります。
さて、先にネタばらしをしたところで、細かく記事内容を見ていきましょう。記事の内容は「日本銀行が生放送での発言で北野 武さんを提訴」というもの。
この記事は、NewsPicksの企画で行ったタレントの北野武氏と、ホリエモンこと堀江貴文氏の対談を、読売新聞が報じたという形式になっています。
ちなみに北野氏、堀江氏の対談自体はNewsPicksで「知られざるコンテンツ産業の裏側 【北野武×堀江貴文】」として2023年12月18日に公開されているので行われたのは事実です。
しかし、この記事の文面を見ると、ちょっとした違和感を覚えます。たとえば、以下の対談内容。
北野 武: 「これだけは言っておきます。金持ちになるために働く必要はまったくありません。つまり、この考え方に気づきさえすれば、自分自身とお金をもっと簡単につなげることができるのです」
堀江貴文: 「あなたはすでに裕福で有名だから、そう簡単に言えるのです。ですが、家族を食べさせるために毎日苦しい労働をしている他の人たちはどうですか?知ってますか?いずれにしても、お金はいくらあっても足りないのです」
なんとも普段の北野氏や堀江氏が喋る内容とはかけ離れすぎた会話です。しかも全てがまるでAIで作ったかのような機械的な会話ばかり。本当にこのような発言があったのでしょうか。
先に読み進めていくと、とあるサービスを利用してお金を増やしているなどという記載とリンクが記事内に貼られていることに気づきます。
それが次の通り。
北野 武: 「信じられないのでしたら、あなたが間違ってることを証明してあげましょう。¥39,750を出してください。それを使って、たった12~15週間で、「サービスT※」のプラットフォームで1億にしてあげますよ!」
(※編集部で伏せた箇所です。実際にはサービス名が記されています)
ということで「サービスT」のところにリンクが貼ってあるのですが、それをクリックすると……
AIを利用した仮想通貨(暗号通貨)のサービスTのサイトに繋がりました。でたー。偽広告から偽記事や偽ランディングページに誘導して、最終的には怪しい投資に誘うという、昨今大流行中の詐欺の流れと全く同じです。
ここからが筆者の本領発揮。読者命名、「プロ詐欺ラレヤー」※の名にかけて、今回も釣られてきます。早速、調査開始です。(※ネット詐欺に潜入してだまされに行く事ばかりしていたら読者に命名されました)
【注意】
次より潜入調査の結果を記していきますが、真似すると大変危険です。編集部では潜入にあたり、専用機材などを用意し、十分に準備と注意を払って実行しています。簡単に見えるかもしれませんが、決して真似をしないでください。
■ どんなサービスに誘導されたのか
この「サービスT」自体が一体何なのか、まずは試しに「電話番号」「メールアドレス」などを入れて登録してみます。
すると次の画面で、別の投資サービス「サービスC」に飛ばされました。ここでは「住所」「生年月日」「免許証番号」と個人情報が求められます。なんともイヤな予感しかしてきません。
■ 検索結果もうさんくさかった
念のためサービスTとCについて検索してみましたが、結論からいうとどちらもうさんくさい。
サービスTの検索結果は、本体サイトがまず最上位に出てくるのは勿論ですが、以降は「サービスTレビュー – 詐欺か正当な取引ソフトウェアか?」という同じ記事がずらっと数百単位で出てきました。恐らくこれは実在することを信用させるために用意された記事かと。でなければ、全く別のサイトで同じ記事が百単位で出てくるわけがありません。また中には、開こうとするとウイルス対策ソフトが反応するものの。
そしてサービスCについては、しっかりとしたサイトが出てきましたが、こちらも実在性は疑わざるを得ません。まず本社住所がサイトに書かれてない、連絡先もメールアドレスしかない。そんな投資サービスあります?さらに他の検索結果の中には、注意喚起が呼びかけられているものもありました。もしサービスCを通じて稼げたとしても出金できない仕組みになっているそうです。これも投資の詐欺サイトあるあるです。
■ カード登録画面は「カード情報クレクレ」状態
さて、ある程度調べがつきましたが、さらに登録をすすめていきます。次に出たのは、カード番号入力!出た!
どうやらサービスCを利用するには一定額の入金が必要で、そのためにカード情報を入力する必要があるようです。金額はたぶん、先に偽北野氏がコメントしていた「¥39,750」なのかと思われます。
ちなみに当編集部では、過去に何度もこの手の情報入力には出会っており、通ることもお手の物。ということで今回も、一般にも公開されているテスト用のテストコードを入れて通します。
しかし、すぐに番号不正で弾かれました。この辺はある程度想定内。実は近ごろの詐欺サイトではカード番号を何度入れても弾かれることがよく起きています。想像ですが1つのカード情報だけではなく、複数のカード情報を入力させるためだと考えています。1つがエラーになり通らなかったら慌てて、他のカード情報を入力する人はいることでしょう。恐らくソレが狙いかなと。
仕方がないのでこの仕様に付き合って、次々テストコードを入れていくのですが、サイトの方が不正な処理を検知したとしてエラーに。
「プリティ プリント」という文字とともに、内部サーバーエラーを示すメッセージが表示され、これ以上進めることはできませんでした。
まぁこれも、最近の詐欺サイトでは割とあるあるです。必要情報抜くだけ抜いたら、適当なエラーを出して終了~というケースがほとんどなのですが……。果たして今回は?
■ その後、電話がかかってきた
その後3時間後ぐらいに、見知らぬ番号から電話がかかってきました。内容としては先ほど入力したテストカード番号が不正でうまく処理ができなかったから、ちゃんと入力しろというもの。
名前を聞くと外国人のような喋りで名前は「ナカムラ」。イギリスにある会社だといい、会社名は「カピリスク」。サービスT、サービスCとはちっとも社名がかすっていません。
そこで、北野氏と堀江氏が「15週間で、サービスTのプラットフォームで1億にしてあげますよ!」と対談で話している記事は本当か?と尋ねてみたら、「本当」だと言い張ります。
そこで証拠を出せとつめてみると、どうやって証拠を出すんだ?と逆ギレ。もしそれでも気に入らなければ、警察や弁護士に相談するのは自由なので勝手にやってくれという。
あまりに話にならないので、その後電話を切り現在にいたります。本当何がしたかったのか……。
■ 結果これは何だったのか
結果として、この読売新聞の記事はなんだったのか。少なくとも言えるのは、大手メディアが個人情報を求めたり、カード番号を入手するようなサービスに誘導することは絶対にありません。なにより最初に説明したとおり、このgooニュース自体が偽サイトです。
また、元ネタとなっているNewsPicksで実際に行われた対談「知られざるコンテンツ産業の裏側 【北野武×堀江貴文】」では、上記のようなサービスを紹介する発言は勿論一切確認できませんでした。
もし仮に言ったとしたなら特定サービスを暗に勧めることになり、れっきとした「ステマ」。今最も業界ではセンシティブな問題です。発覚すれば一発で世間の信用を失うだけでなく、会社そのものが存亡危機に陥ります。なので絶対に「読売新聞」のような大手メディアが書いた記事ではないと断言でき、gooニュースでもこの手の「偽サイト・悪質サイト」に対する注意喚起を行っています。
ネットにあるウソを見極めるために、大手ニュースの記事をソースとするのは大切ですが、サイト自体が今回のように偽サイトの場合があります。リンクを開いて出てきたからといって、安易に信じてしまわないよう注意をしてください。特に広告経由の場合には。
ちなみに、この偽gooニュースのサイトでは、記事のリンクだけでなく、その他諸々どこを押しても同じサービスに飛ばされました。
また、PCだけでなく、スマホでもこの記事は見ることができます。結果、同じように登録を求められ、最後に「あがうございます」という、下手な日本語メッセージが……。なんだかなぁ、とやはり今回も思ってしまうのでした。
<参考>
【注意喚起】gooニュースの偽サイト・悪質サイトにご注意ください(gooニュース)
知られざるコンテンツ産業の裏側 【北野武×堀江貴文】(NewsPicks)
(たまちゃん)
提供元・おたくま経済新聞
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