NHKの国際放送サービスはかなり手厚くリッチ

 こうした流れのなか、なぜ総務省はNHKの広告料収入制度導入の検討に着手したのか。元日本テレビ・ディレクター兼解説キャスターで上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明氏はいう。

「英国BBCも含めて海外では公共放送局が経営を安定させるために収入を多様化させる動きが広まっています。一方、日本の放送法はNHKが企業などの広告を放送することを禁じていますが、放送法には現在の実態から遅れている部分があり、NHKのネット事業をはじめグレーなまま運用されてきたという経緯があり、総務省としては国内と世界の趨勢を踏まえて放送法をより現実に即したかたちに変えていこうということでしょう。

 NHKが収入を多様化させること自体は悪いことではなく、まずは国際放送についてどうするのか検討を始めた段階ですので、今後の議論の行方を見守るということになります」

 テレビ局関係者はいう。

「国際放送のコンテンツの大半は国内向け地上波番組として制作されたものであり、NHKにとっては副次的な事業といえるが、100以上の国に衛星放送、ケーブル局、ウェブサイト、アプリ、ラジオ放送など多彩な方法で提供しているため、その運営コストは大きい。なのでNHKとしては国際放送を運営する費用を賄うために有料課金制か広告料収入制を導入したいところだが、いままで無料だったものを有料にすると反発を招くおそれがあるということで、広告料収入制を採用することで無料を維持するということだろう。

 NHKの国際放送サービスはかなり手厚くリッチという印象を受け、これを世界中の多くの人向けに無料で提供する体制を維持する必要性があるのかといわれれば疑問な面もあり、受信料以外の収入を充てようとすることは理解はできる」