近年、日本各地でクマによる被害が多発している。人間や家畜が危険にさらされた結果、行政からの依頼で猟友会のハンターがクマを駆除する事態に進展することもある。一方で、クマ駆除に対する批判は根強く、抗議の電話やメールが役所に殺到するトラブルも後を絶たない。
気候変動の影響などで人里に降りてくるクマが増える中、ヒトとクマの共存を考える上で海外の事例が参考になるだろう。
クマに生きたまま食べられる男性
2023年12月、海外の動画共有サイト「TheWorldWatch」で、「男が見世物のクマに近づきすぎて、家族の目の前で生きたまま食べられる」というタイトルの動画が公開された。
動画には、倒れた男性の上に覆いかぶさるクマが映っている。クマは棒で突かれても男性から離れようとしない。噛まれたり引っかかれたりした男性の上半身は出血している。人々が叫び声を上げる中、クマは男性の体のあちこちに噛みつく。水をかけられたクマは男性を引きずって奥の方へと歩いて行った。その様子を見て泣き出す人もいた。
この動画は、2017年8月2日の朝、タイ・ペッチャブーン県にあるワット・ルアン・ポー・ラマイ寺院で撮影された。英紙『the Daily Mail』などでも報じられたため、世界的に話題となった事件だ。
寺院を訪れていた観光客のナイプーム・プロムラティーさん(当時36)は、ロープを使って、エサの入ったボウルをクマのいる囲いの中に吊り下げた。クマをからかったのだ。結果としてクマを怒らせてしまい、クマに囲いの中へ引きずり込まれた。
クマは、気を失っているプロムラティーさんに噛みつき、肉を食いちぎった。その悲惨な様子が動画の通りだが、後にプロムラティーさんの友人の1人が囲いの中に入り、檻の中に入ったクマを棒で殴ってプロムラティーさんを救出した。
午前11時過ぎには救助隊が到着し、血まみれのプロムラティーさんを病院に搬送した。プロムラティーさんは重傷を負っていたが、幸運にも一命をとりとめた。多数の咬傷や裂傷に加えて、肺に穴が開き、急性腎不全になっていたが、入院して回復したという。