まさにUFOによって“アブダクト”されたとしか思えない何の手がかりもつかめない失踪事件がいくつかある。1970年代にアメリカで起きた「リン・シュルツ失踪事件」もそのひとつだ――。
■キャンパスで“蒸発”した女子大生
さっきまですぐそこにいた人物が何かの拍子に忽然と姿を消してしまった――。ほんのわずかな時間の間にいったい何か起こったのか。
女子大生のリン・シュルツ(当時18歳)は米バーモント州にあるミドルべリー大学の1年生で、キャンパスと学生寮を往復するだけの忙しい学園生活を送っていた。
1971年12月、各科目の試験の時期を迎えていたのだが、リンはこの試験が終われば久しぶりに実家に帰って家族や地元の友人たちとゆっくりクリスマスが過ごせることを楽しみにしていたという。
12月10日、リンは午後1時から始まる試験を受けに、12時55分に数人の学友と共に寮を出た。
試験が行われる教室への道すがら、リンは試験では必ず手にしている縁起の良いペンを忘れたことに気づき、友人たちに「先に行ってて」と告げて寮に引き返したのだった。そして友人たちはこの後、リンの姿を二度と見ることはなかったのだ。
試験が始まる1時になってもリンは教室に姿を現さなかった。学友たちは不安に駆られ学生寮のリンの部屋を見に行った。部屋にリンはいなかったが、奇妙なことにリンの財布と学生証が部屋に残されたままであった。財布も学生証も持たずにリンはいったいどこへ行ったというのか。
リンのこの“蒸発”の2日後、大学側は警察に事情を説明し捜査が始まった。
地元警察による周辺の聞き込み調査で、試験当日の12時半に大学近くの食料品店でリンらしき人物がプルーンを食べていたという目撃証言が得られた。友人たちと教室へ向かう直前のことになる。
さらに奇妙なことに、リンは食料品店の向かいにあるバス停に来るニューヨーク行きのバスを待っているのだと目撃者に話したというが、すでにその時間にはバスは行ってしまっていたということだ。
食料品店でプルーンを買い食いした後、リンは学生寮に戻ったことになるが、この行動が何を意味するのかまったく不明である。しかしこの後の警察の捜査でこのバス停にまた別の手がかりが見つかった。