クライオニクスは詐欺なのかファンタジーなのか

 こうしたクライオニクスの処理を受けて、生き返った人間はいるだろうか? まず前提として、死体を生き返らせる技術は過去にも現在にもない。そしてクライオニクスは死体を冷凍するだけであり、蘇生に関しては責任を持たない。それは未来の誰かの仕事だ。

 不凍液と血液を入れ替えて細胞を破壊せずに保存するというのは、一見もっともらしいが、不凍液に使われるエチレングリコールは毒性が強い。大量に飲むと重度の腎臓障害を起こし、48時間ほどで腎不全を起こし、場合によっては死ぬこともある。仮に冷凍によって細胞が壊れないとしても、腎不全では復活は難しいのではないか。

 クライオニクス会社は、遺体を冷凍するのは神経系を未来へ残すためだとしている。脳や脊髄のネットワークに意識があると彼らは言い、そうした神経ネットワークが冷凍保存されていれば、全身の蘇生は無理でも脳だけの蘇生は可能だろう、あるいは神経網だけスキャニングしてコンピュータ上に再構成し、そこで意識が目覚めるのだと説明している。

 そして冷凍した遺体からクローンを作り、脳を移植するかコンピュータ上の意識をクローンの脳にダウンロードすれば、復活できるはずだという。

 ここで問題は、脳をコンピュータ上に再構築したらそこに意識が生まれるのかどうかと冷凍した遺体から細胞を取り出し、クローンを作ることができるのかという2点だ。

体を冷凍して未来で解凍”するクライオニクスは詐欺かファンタジーか
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)