また、バイデン大統領はエスカレーションを恐れるあまり、つい先日までウクライナがロシア領内を攻撃することを禁止しており、最初は渡さないと言っていた兵器の供与も、少し時間が立てば態度をひっくり返すという、一貫性の無い対応を示してきた。果たして、ウクライナ軍の行動を抑制し、ジリジリと兵器供与の「質」を高めていく戦略が正解だったのかどうかは、今後のウクライナ戦争の情勢次第で決まるであろう。
また、バイデン政権が対中外交の側面で力を入れていた、半導体の輸出規制についてもウクライナ支援と同じで、評価を下すのにはまだまだ時間がかかると思われる。バイデン政権は中国に対して軍事技術の発展につながる先端半導体の輸出を規制する措置を集中的に講じており、同盟国も巻き込む形でこれを進めてきた。しかし、そのような貿易管理措置が実際に功を奏し、中国の軍事的台頭を抑止できたのかどうかは、これからの十年で明らかになっていくのではないかと考える。
トランプ路線を踏襲したバイデン外交バイデン外交のさらなる特徴はトランプ氏政権の影響を多分に受けていることであろう。その一つが、貿易政策に現れている。トランプ氏政権によって課された対中関税はバイデン政権下でも維持されており、バイデン政権によるUSスチール買収阻止は、同盟国に対しても貿易面で保護主義的態度を取るという意味でトランプ氏政権と何ら代わりない。
中東外交でもバイデン政権はトランプ氏政権の手法を踏襲している。トランプ氏政権ではイスラエルとアラブ諸国の関係を正常化させ、対イラン包囲網を形成することに努めていた。一方のバイデン政権もサウジアラビアとイスラエルの国交正常化を熱心に進めており、これが実現すればトランプ氏が目指そうとした中東外交が完成形に近づくこととなる。
バイデン政権発足当初には、オバマ政権が実績として残し、トランプ氏が覆した対イラン、キューバの外交方針の転換も期待されたが、結局バイデン大統領はトランプ路線の踏襲を余儀なくされた。オバマ政権時代に米国は宿敵であったキューバーと国交正常化し、イランとは歴史的な核合意を成立させた。しかし、民主党の悲願であった外交目標をバイデンは達成することができず、いかにトランプ氏や共和党の力が強くなっているかを示唆する。
唯一の外交実績?