KY活動の重要性

 食品製造現場における事故は少なくない。農林水産省の調査によれば、2019年の1年間に食料品製造業の「新たな製品の製造加工を行う事業所」「工場、作業所」で発生した作業事故は7969件、そのうち死亡事故は16件、重篤事故は3672件となっている。

 2月には、大手製パン企業、山崎製パンの千葉工場(千葉市美浜区新港)で、女性アルバイト従業員(61)がベルトコンベヤーに胸部を挟まれ死亡するという事故が発生。同社の工場では過去10年間に4件もの死亡事故が起きていることがわかっている。

「食品工場には大型の食品製造機械が数多く設置されており、作業者が巻き込まれたり、挟まれたりといった事故が起こりやすい。原因としては、作業者の高齢化に伴う俊敏性の衰え、非正規雇用者や外国人労働者の増加で安全対策の講習が十分に行われないことなども挙げられます。

 巻き込まれ事故の多くは機械の稼働中に発生します。清掃時は電源を切るのが原理原則ですが、清掃時の電源の切り忘れが原因の事故が多いといわれます。海外製の機械では、非常停止ボタンがいたるところに設置されたり、2人同時にスイッチを押さなければ起動しないといった対策を施されたものもあります。装置の稼働領域に身体の一部が入ると光電管検出などによって非常停止するような工夫を行っている食品メーカーもあります。

 転倒事故がもっとも多いのは食品メーカーだと思います。作業場床面の水や油分によって長靴が滑りますし、熱湯を用いるので火傷も頻繁に発生します。そのため、ゴムエプロンと長靴の隙間から熱湯が入らないよう作業者同士でチェックを行います」(食品メーカー関係者/3月1日付当サイト記事より)

 キリンや山崎製パンほどの大企業であっても、食品メーカーで死亡事故が発生してしまう背景について食品メーカー関係者はいう。

「基本的には作業者自身が注意するしかないのですが、現場管理者や経営層による安全衛生のための見回り、危険個所の指摘、いわゆるKY(危険予知)活動を定期的に実施しています。KY活動の内容は全社的に水平展開して、同様の事故が起こる可能性はないかといった点について、各職場のリーダーがミーティングを実施します。このほか、労災やヒヤリハットの事例は細かい報告書を作成し、グループ会社も含めて情報を共有します。

 こうした取り組みを行っても、労災は必ず起こります。それをゼロに抑えるためには、作業者の意識改革と共に経営層の本気の姿勢が必要です。それでもゼロに抑えるのは至難の業です」(同)

 今回の事故の原因や安全対策面について現在、キリンビールに問い合わせ中であり、回答を入手次第、追記する。