■「黒よりも熱い色」が存在した
一ノ瀬氏は以前、「最小スケール気候変動適応策としての被服色彩選択効果について」という発表の中で、色違いの9色のポロシャツを使用した実験結果について言及している。
曰く、「色彩による温度差は明瞭であり、白、黄がとりわけ低く、灰、赤がほぼ同じレベルで、紫、青がさらに高めで拮抗し、緑、濃緑、黒が最も高温のグループを形成した」とのこと。
その温度差は非常に大きく、なんと「濃緑(高温)と赤(低温)との間には5〜10℃の温度差(夏季日中の日照条件下)が生じる」と、衝撃の事実が明かされたのだ。
各ポロシャツを表面温度の高さ順に並べると、濃緑、黒、青、緑、紫、赤、灰、黄、白となり、僅差ではあるが「熱を吸収する色の代名詞」的存在の黒より、濃緑の方が高温になったことが判明。
濃緑(最高温)と白(最低温)の間では、約15℃もの温度差が生じるという。また、ほぼ無風の条件下では黒や緑で50℃を超える事例も観測されており、聞いているだけで恐ろしくなってしまう。
これらの事例を踏まえ、一ノ瀬氏は「夏季の暑熱リスク軽減の視点から、被服の色彩選択も重要な気候変動適応策の一つと言えます」と結論づけていた。