2013年8月のある暑い夏の日のこと。
米テキサス州サンアントニオで、8歳の少年が数日間にわたる発熱、頭痛、嘔吐、光過敏症を訴えた末、病院に救急搬送されました。
母親は少年をいくつかの病院に連れていったものの、まったく回復の兆しを見せず、悪化の一途を辿っていたという。
少年はすでに意識がなく、光や音、その他の刺激にも反応しなくなっていました。
医師たちは少年に人工呼吸器をつけ、病気の原因を突き止めるべく、懸命の努力を続けました。
そして彼らが少年の脳脊髄液の中に見つけたのは、”脳食いアメーバ”として知られる最悪の殺し屋「フォーラーネグレリア」でした。
このアメーバに感染すると、ほぼ100%の確率で死に至るという。
果たして、フォーラーネグレリアはどのような経路でヒトに感染するのでしょうか?
目次
- 脳を溶かす「殺人アメーバ」の恐ろしさとは?
- 殺人アメーバに対抗する「新たな治療薬」を求めて
脳を溶かす「殺人アメーバ」の恐ろしさとは?
フォーラーネグレリア(学名:Naegleria fowleri)は、約25〜30℃の温かい淡水環境に生息するアメーバです。
ヒトに対して病原性を示すことで知られ、フォーラーネグレリアが存在する水に接触すると、鼻から侵入して脳に到達し、感染に至ります。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、フォーラーネグレリアの感染者は14歳未満の子供たちが特に多いという。
これはおそらく、子供たちが大人よりも川遊びや湖へのジャンプをする機会が多く、鼻に水が入りやすいためと考えられています。
サンアントニオの少年も当時、リオグランデ川で母親と水遊びをしていたことがわかっています。
フォーラーネグレリアに感染すると「原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)」を発症します。
これは中枢神経系が冒されることで、嗅覚や味覚に変化が起こり、次第に発熱や頭痛、嘔吐、光過敏症といった一連の症状を引き起こす危険な病気です。