楽天経済圏全体でのプラス面が明確になる
楽天グループは携帯電話事業に参入するために経営的には大きなリスクを背負っている点は見逃せない。同社が携帯事業に投下した資金は累計1兆円以上とみられ、24~25年には、その資金の調達のために発行した社債のうち計約8000億円の償還を迎える。また、資金調達のために、グループ内で利益貢献度が高い楽天銀行や楽天証券ホールディングスなどの金融事業会社の株式の一部を売却し始めており、4月には楽天銀行や楽天証券、楽天カードなどの金融事業を一つのグループにまとめる方針を発表している。そして、楽天Gの成長の源ともされる楽天ポイントサービスに関係する楽天ペイメントを傘下に持つ楽天カードを上場させるとの観測も以前から流れている。
以上を踏まえると、携帯事業を手掛けたことは楽天G全体にとってプラスの面とマイナスの面のどちらが大きいと考えられるのか。
「携帯事業がなかなか黒字化できなくなったことは、楽天Gにとって大きな誤算だったはずです。本来は携帯事業を軸に、楽天市場などのインターネットサービスと楽天カードなど金融事業の3本柱で相乗効果を期待してのモバイル参入だったはずです。それが生き残りのために金融事業を切り売りせざるを得なくなり、一時期は本当に苦しい状況だったと思います。金融事業を手放し始めた時点では、あきらかに携帯参入はグループ全体からみてマイナスの状況でした。
ただ、最近では金融事業を再編したうえで、再び統合する形で楽天Gの手元に主要ビジネスを置ける方向へと舵を戻しています。あと1年間、なんとか持ちこたえて楽天モバイル黒字化を達成できれば、楽天経済圏全体でのプラス面が明確になるはずです。今はそのちょうど転換期にあると私は見ています」(鈴木氏)
楽天Gは楽天ポイント付与などの面で楽天モバイル契約者にさまざまな優遇措置を提供することで、楽天市場や楽天トラベル、各種金融サービスをはじめとするグループ内のさまざまなサービスの利用者数・取扱金額を増大させ、楽天経済圏全体の成長につなげる戦略を描いている。また、今月1日のイベント『Rakuten Optimism 2024』内で三木谷会長は、AI技術基盤「Rakuten AI」に楽天モバイルのユーザーからのデータも取り入れると語っており、新たなAI関連事業との相乗効果も見込んでいる。