いま日本で起こっている現象も、これと似ている。それを止めるには、まず円安を止める必要がある。政策金利を上げるとLM’曲線がLMに戻り、金利が上がってi’になるため、資金が流入して円高になる。これによって海外投資は減るが、国内のIS曲線はあまり変わらない。

ちょっとむずかしいが、理屈は単純である。黒田日銀が過剰に供給したマネーが海外に投資されて円安と空洞化の悪循環が起こったので、それを巻き戻して円安に歯止めをかけ、金利を上げて黒田日銀のばらまいたマネーを回収するのだ。

長期的な対策としては、データセンターや半導体工場などを国内に誘致し、対内直接投資を増やすことが重要だ。それには雇用を流動化し、法人税率を下げ、原発を再稼動して、生産コストを下げる必要がある。所得格差については、社会保障の改革が必要である。

生産性の低い地方の中小企業への雇用調整助成金などの補助をやめ、収益率が金利を下回るゾンビ企業を淘汰する必要があるが、安倍政権も岸田政権も低金利と補助金で企業を延命してきた。

金利の正常化は短期的には痛みをともなう政策であり、株式市場では「植田ショック」などといわれている。しかしコアCPIは2.6%だから、実質金利はマイナス2.4%である。これで利益の出ない企業は、市場から退場すべきだ。

円安が止まれば資金が国内に還流して雇用は増えるが、金利が上がるとゾンビ企業は淘汰される。いま日本に必要なのは古い企業を延命するアベノミクスを清算し、新陳代謝によって生産性を高めることである。