さらに、政治情勢に重大な影響を及ぼす検察捜査について、「検察の暴走」という事態も、決してあり得なくはない。今回の政治資金パーティー裏金問題についても、今後の捜査の展開如何では、常設の捜査機関である特捜部の権限行使が、組織の威信等を動機として、歯止めが効かない状況に至ることもあり得る。

その場合、「検察の暴走」を止めることができるのは法務大臣の指揮権しかない。しかし、まさに造船疑獄のときがそうであったように、法務大臣の指揮権が検察の意向に反した形で行使された場合には、「検察捜査への介入」が世論の強い批判を浴び、法務大臣の責任のみならず、内閣自体の責任にも発展することになる。

法務大臣がこのように検察捜査に対して介入するとすれば、「政治家」としての立場というより、法務省のトップとして、法務省の組織としての検討に基づき、客観的中立的な立場で行うものであることが強く求められる。その法務大臣が、捜査の対象となっている派閥、自民党の政治家であった場合、そのような法務大臣が指揮権について判断するのは利益相反そのものである。

そのような場合においても、公正で客観的な判断が可能で、国民が信頼できる人物でなければ、現在の状況において、法務大臣の職責を果たすことはできない。

それは、十分な法律の素養があり、これまで法務・検察とも、政治とも関係が希薄であった民間人が適切だと思われる。

過去に民間人が法務大臣を務めた例としては、リクルート事件の捜査中であった1988年12月に就任した元内閣法制局長官・元最高裁判所判事の高辻正巳氏、ゼネコン汚職事件の捜査の最中の1993年8月に就任した民事法学者の三ケ月章氏の例がある。

「令和のリクルート事件」とも言われている今回の政治資金パーティー裏金問題の捜査の最中に、民間法務大臣が就任することは、ある意味では必然だと言える。

検事総長に対する指揮権は、法務大臣にとって極めて重要な権限である。それを適切に判断することができない小泉氏は、速やかに大臣を辞任し、後任には民間閣僚を任命すべきである。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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