ゼレンスキー氏は今年11月にも第2回和平サミット会議の開催を希望しているが、「私は、11月の第2回和平サミットにロシアの代表が出席すべきだと考える。そうでなければ、我々は実行可能な成果を達成できないからだ」と主張している。ちなみに、ロシアが参加すれば、中国も和平サミット会議に出席するだろうと見られている。

ゼレンスキー氏はロシア占領地に関して国民投票を実施する考えがあることを示唆したが、同氏も、戦争を続け、多くの国民を犠牲にするより、国民の合意があれば、ロシアとの政治的交渉に応じるべきではないか、という方向に傾いてきているのではないか。いずれにしても、厳しい選択を強いられていることは間違いない。

ロシアの占領地に関するウクライナ国民投票の実施案は、具体的には、和平を実現するためには占領地20%の譲歩を含む一定の譲歩をロシア側にしてもいいか、と問う内容だ。国民が反対すれば、ゼレンスキー氏は欧米諸国の軍事支援を受けながら、ロシアとの戦いを続行する以外に選択肢がなくなる。国民が合意すれば、ゼレンスキー氏はプーチン氏に交渉を呼び掛けることになる。

ロシア軍はウクライナの首都キーウに接近し、短期間でウクライナを制圧しようとしたが、ウクライナ国民は祖国防衛に立ち上がり、ロシア軍を撤退させた。そのウクライナ国民が戦争2年半後、ロシアとの政治的交渉で戦争を終えるべきだと結論する可能性はある。戦争疲れもあるだろう。それ以上に、ロシア側にもいえるが、多くの犠牲を強いる戦争を継続していく気力と価値を見出せなくなってきているのではないか。